February, 13, 2024, つくば--NIMSは、太陽光に対して20%以上の光電変換効率 (発電効率) を維持しながら、60℃の高温雰囲気下で1000時間以上の連続発電に耐えるペロブスカイト太陽電池 (1cm角) を開発した。この研究の成果により、ペロブスカイト太陽電池が研究室レベルから屋外設置の実用化レベルに大きく前進した。
国土面積の小さい我が国で化石燃料を太陽光発電で代替するためには、製造コストが安い、加工しやすい、また高い発電効率の太陽電池が求められる。この観点からペロブスカイト太陽電池は有望であるが、電池の耐久性にはペロブスカイト層に侵入する酸素や水分による欠陥の発生が大きく関与することが分かっており、数10年間安定に発電し続けることが課題となっている。室温 (25℃) での疑似太陽光照射下では、1000時間連続発電が実現できていたが、太陽光が降り注ぐ屋外では、表面温度が50℃以上 (夏場では85℃) になるので、より高温環境下での耐久性が求められる。
ペロブスカイトAサイトに有機アミン類を導入することにより、半導体層と絶縁層が交互に積層した二次元 (2D) ペロブスカイトができる。2Dペロブスカイトは3次元 (3D) ペロブスカイトに比べて水や酸素に強いことが一般的に知られている。
研究では、FA0.84Cs0.12Rb0.04PbI3 3Dペロブスカイト/C60界面に有機アミンを導入し、2Dペロブスカイト結晶粒を形成させ、ペロブスカイト/C60界面にある、発電効率を低減させる欠陥を取り除くことにより耐久性と発電効率向上を達成した。
今後、NIMSではペロブスカイト太陽電池の高効率化とともに高耐久化のための屋内 (より高温条件下における疑似太陽光照射) や屋外試験を行いながら、長期信頼性を保証するための加速試験の確立を進める。
研究成果は、Nature Communicationsに2024年1月30日オンライン掲載された (doi: 10.1038/s41467-024-45228-9) 。