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核融合反応のための新しい「スパークプラグ」を作成

February, 13, 2024, New York--Laboratory for Laser Energetics(レーザエネルギー研究所)のOMEGAレーザシステムで開発された技術は、より大規模な核融合の点火に有望である。

ロチェスター大学のレーザエネルギー研究所(LLE)の科学者は、慣性閉じ込め核融合(ICF)の直接駆動法に効果的な「スパークプラグ」を実証する実験を主導した。Nature Physics に掲載される2つの研究で、著者は、この研究結果について議論し、将来の施設で最終的に核融合を起こすことを期待して、より大規模に適用する方法を概説している。

LLEは、大学を拠点とする米国エネルギー省(DOE)最大のプログラムであり、世界最大の学術用レーザであるが、カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の国立点火施設(NIF)のほぼ100分の1のエネルギーであるOMEGAレーザシステムをホストしている。ロチェスターの科学者たちは、OMEGAを使って、重水素とトリチウムの燃料で満たされた小さなカプセルに28キロジュールのレーザエネルギーを照射し、カプセルを破裂させ、燃料原子核間の核融合反応を開始するのに十分な高温のプラズマを生成することに成功した。この実験では、中心の高温プラズマのエネルギー量よりも多くのエネルギーを生成する核融合反応が起こった。

OMEGA実験では、カプセルに直接レーザを照射し、NIFで用いられている間接駆動方式とは異なる。間接駆動方式では、レーザ光がX線に変換され、カプセルの爆縮が促進される。NIFは、約2,000キロジュールのレーザエネルギーを使用して、カプセルにX線を照射する間接駆動を使用した。これにより、NIFは2022年に核融合点火(ターゲットからエネルギーネットゲインを得る核融合反応)の達成に成功した。

「核融合が起きる場所の内部エネルギー量よりも多くの核融合エネルギーを生成することは、重要な閾値である」と、最初の論文の筆頭著者、現在はサンディア国立研究所で放射線とICFターゲット設計のスタッフサイエンティストであるConnor Williams’23 PhD (物理学と天文学)は話している。「これは、プラズマ燃焼や点火の達成など、後で達成したいこと全てに必要な要件である。」

わずか28キロジュールのレーザエネルギーでこのレベルの爆縮性能を達成できることを実証したことで、ロチェスターのチームは、より多くのエネルギーを持つレーザにダイレクトドライブ方式を適用できる可能性に期待を寄せている。スパークプラグのデモンストレーションは重要なステップであるが、OMEGAは小さすぎて点火するのに十分な燃料を圧縮できない。

「最終的にスパークプラグを生成して燃料を圧縮することができれば、直接駆動には間接駆動と比較して核融合エネルギーに有利な多くの特性がある」と、Varchas Gopalaswamy ’21Ph.D(機械工学)は話している。同氏は、NIFのサイズに似たメガジュールクラスのレーザで直接駆動アプローチを使用することの意味を探る2番目の研究を主導したLLEの科学者である。「OMEGAの結果を数メガジュールのレーザエネルギーにスケーリングした後、核融合反応は自立的になると予測されている。これは『プラズマ燃焼』と呼ばれる状態である」

Gopalaswamyによると、ダイレクトドライブICFは、レーザ核融合における熱核点火と正味エネルギーを達成するための有望なアプローチである。

「これらの最近の実験の成功に寄与する主な要因は、統計的予測に基づいて機械学習アルゴリズムによって検証された新しい爆縮設計方法の開発である」と、LLEのチーフサイエンティスト、機械工学科および物理学・天文学科のRobert L. McCrory教授、Riccardo Bettiは話している。「これらの予測モデルにより、価値ある実験を行う前に、有望な候補設計のプールを絞り込むことができる。」

ロチェスターの実験では、複雑なレーザ施設を運用するために、多数の科学者、エンジニア、技術スタッフの間で高度に調整された努力が必要だった。MITプラズマ科学核融合センタとGeneral Atomicsの研究者と協力して実験を行った。これらの実験は、DOEの国家核安全保障局(NSA)から資金提供を受けた。ターゲットの設計作業は、DOEの核融合エネルギー科学プログラムから資金提供を受けた機械学習アプリケーションから生まれた。