February, 9, 2024, Washington--バイオフィルム(バクテリアが表面に付着したときに形成されるヌルヌルした層)は、バクテリアが極端な環境から身を守り、抗生物質を回避することさえできるようにする。新しい研究で、研究者は、光学トラップの形のレーザ光を使用してバイオフィルムの形成を制御できることを示した。この知見により、科学者はこれらの微生物層を様々なバイオエンジニアリングアプリケーションに利用できるようになる可能性がある。
「微細な部品を製造するには、通常、高度な技術を要する製造プロセスが必要だが、光ピンセットを使用して、個々の細菌やバクテリアクラスタの位置を正確に制御できることがわかった。これにより、バクテリア構造の増殖パターンを微視的なレベルで高精度に変化させることができる」と、カリフォルニア州立大学Northridge校の研究チームリーダ、Anna Bezryadinaは話している。
Optica Publishing GroupのBiomedical Optics Express誌では、光学トラップを使用して細菌の凝集とバイオフィルムの発生を調節する実験が報告されている。その結果、様々な種類のレーザを使用して、バイオフィルムの成長を刺激し、抑制できることがわかった。
「バクテリアのLegoブロックのようなものを作り、必要に応じて動かしたり、くっつけたり、破壊したりすることもできる。この研究は、例えば、新しいタイプの生分解性材料や、新世代のバイオフィルムベースのバイオセンサにつながる可能性がある」(Bezryadina)。
光を使って細菌の増殖を制御
ほとんどのバイオフィルム研究は、バイオフィルムを抑制および制御するための機械的、化学的、生物学的アプローチに焦点を当てている。科学者たちは、合成的および化学的アプローチを使用してバイオフィルムを活性化および制御し、バイオフィルムを特定の空間構造に組みこめることを示してきたが、Bezryadinaとチームは、光学的手法を使用してバイオフィルムのダイナミクスを制御できるかどうかを調べたいと考えていた。これを達成するには、高度な光学技術と微生物学の専門知識を持つ学際的なチームが必要だった。
研究チームは、自然にバイオフィルムを形成する非病原性細菌である枯草菌(B. subtilis)を実験した。チームは、B. subtilisに敵対的な低栄養環境を利用して、バクテリアにバイオフィルムの形成を促した。小さなバイオフィルムクラスタを取得した後、473nmの青色レーザまたは700nmから1000nmまで調整可能な近赤外Ti:sapphireレーザを使用して、光捕集実験を行った。
その結果、820nmから830nmの波長で発光するレーザを用いることで、バイオフィルムクラスタの長時間の光捕捉が可能になり、著しい光損傷を最小限に抑えることができることが分かった。しかし、バクテリアに吸収される波長である473nmのレーザを使用すると、細胞が破裂し、バイオフィルムクラスタが崩壊した。また、光学操作に理想的な細菌クラスタは、3個から15個の細胞で構成されていることも観察された。
パターンの作成
波長820nmの光ピンセットでバクテリアのダイナミクスやバイオフィルム形成を1時間調べ、バクテリアのクラスタが光学的に閉じ込められたクラスタの近くに凝集し、表面に付着してマイクロコロニーを形成し始めることを発見した。また、光学的にトラップされたバクテリアクラスタをサンプル全体の特定の位置に移動させることもでき、バクテリアから構造を構築するのに役立てることができる。近赤外レーザは、高集束近赤外レーザに曝露された細菌クラスタのバイオフィルム形成を妨げないと見られ、これは、800 nmから850 nmの範囲の近赤外波長を、細菌クラスタの光学的捕捉、操作、およびパタン形成に長期間使用できることを示唆している。
「自然界では明らかに制御されていない細菌バイオフィルム形成にもかかわらず、われわれの研究は、細菌バイオフィルム形成が光によって影響を受ける可能性があることを示した。この論文は、バクテリアのような容易に入手できる資源から微細な建築材料を創り出すという長期プロジェクトの第一歩である。今後の研究では、この発見を利用して、バクテリアのLegoブロックから構造を構築するプロセスを開発する予定である」とBezryadinaは話している。
全体として、実験により、正確な増殖条件、クラスタのサイズ、およびバイオフィルムを操作するために必要な波長にある程度の柔軟性があることが明らかになった。研究チームによると、この手法を他の種類のバイオフィルム形成微生物にも適用できる可能性がある。