量子磁力計は、材料の微小な欠陥を早期に検出する

February, 2, 2024, Freiburg--量子磁力計は、強磁性体の微小な損傷を検出して可視化することができる。航空宇宙技術や自動車産業では、システムや材料の弾力性と安全性を大幅に向上させるのに役立つ。この結論は、最近完成したFraunhoferライトハウスプロジェクトQMagの研究者によって達成された。また、生物医学、流量測定、チップ製造における量子磁力計の使用についても調査した。

金属材料の亀裂、析出、その他の不規則性などの構造上の欠陥は、磁場の局所的な変化につながるが、磁力計を使用して非破壊でテストできる。量子磁力計は、従来の技術よりもはるかに感度が高く、材料のわずかな磁気変化も検出できる。「自動車および航空宇宙工学では、材料の信頼性と耐久性を確保することが不可欠だが、これまで使用されてきた技術は大きすぎるか、産業界で利用できないかのいずれかである」と、QMagのプロジェクトマネージャ、Fraunhofer IAF応用固体物理学研究所の所長Dr. Rüdiger Quayは話している。

Fraunhoferの研究者は、「量子磁力測定」プロジェクト(QMag)において、特定の産業用途向けの量子センサを調査し、さらに開発を進めてきた。研究チームは、非常に高い磁場感度を特徴とする光ポンピング磁力計(OPM)と、ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)中心に基づく極めて高い空間分解能を持つイメージング量子磁力計を用いた2つの補完的なアプローチで研究を行った。

いずれらの技術も室温で動作し、産業用途に適している。この研究結果は、量子磁力計が、材料の疲労がまだ目に見えていない場合でも、サンプルの磁場の変化を検出することを示している。研究チームは、OPMを使用して、繰り返し疲労にさらされた強磁性体サンプルの磁場の変化を測定した。その結果、量子磁力計は、従来の技術よりもはるかに早く、材料の微小な欠陥を検出できることを実証した。また、部品検査などの工業プロセスでの使用において非常に重要な測定時間短縮も可能だった。

材料試験では、OPMsとNV磁力計を補完的に使用できる:OPMsはサンプル全体から動的信号を提供するが、NV磁力測定は、マイクロスケールおよびナノスケールの個々の損傷の磁気特性を詳細に測定するために使用できる。「材料試験では、量子磁力計は、材料に認識可能な亀裂が現れる前に、強磁性体の部品の破損を推定するのに有用である。これは、安全重視のコンポーネントにおいて特に重要な役割を果たす」と、Fraunhofer IWM材料力学研究所の研究者、Dr. Simon Philippは話している。

バイオメディカル、流量測定、チップ産業におけるさらなる応用
また、研究チームは、材料試験でより迅速な結果をもたらし、さらなる応用を可能にする新しいNV磁力計の開発にも成功した:広視野磁力計は、広いサンプル面積の磁場を非常に短時間で測定するため、産業用途での迅速な測定に適している。「広視野磁力計は、強磁性材料の特性評価と最適化に使用可能であるが、バイオメディスルや医療技術のアプリケーションにも最適である。有機サンプルは、非破壊でイメージングして調べることができる」と、Fraunhofer IAFの研究者、Niklas Mathesは話している。

研究チームは、流量測定におけるOPMsの使用により、OPMsに基づいてパイプ内の液体の流速を測定するためのまったく新しい方法を開発した。磁気流量測定は、幅広い媒体に適用できる非接触方式であり、プロセス制御での使用に適している。この方法は、以前の流量測定方法は通常侵襲的であったため、大きな進歩を表している。

また、マイクロ・ナノエレクトロニクスやチップ製造における量子磁力計の活用についても調査し、品質管理において、量子磁力計を使用して電気回路を測定し、故障したトランジスタを即座に検出できるなど、大きな可能性を見出した。

産業用試験設備
研究成果を産業界に提供し、特定アプリケーション向けに開発された技術をテストするために、プロジェクトの一環として2つの試験施設が設立された。Fraunhofer物理測定技術研究所IPMには、テスト測定に使用できる磁気シールドルームが設置されている。「試験施設の磁気環境は、残留磁場が5ナノテスラ未満で、非常に高いノイズ抑制を提供する。これにより、脳波が発生する最小磁場も測定できる。われわれは、この環境を産業界が測定サービスに利用できるようにしている」と、Fraunhofer IPMの研究者、Dr. Peter Kossは説明している。

量子磁力計の産業界への移転を容易にするために、Fraunhofer IAFに複数のNV磁力計を含むさらなる試験施設が設置された。これにより、関心のある企業、特に中小企業や新興企業は、特定の要件に対する量子磁力計の利点と可能性を評価できる。

QMagプロジェクトについて
Fraunhoferライトハウスプロジェクト「量子磁力測定」では、ドイツのFraunhofer研究機構の5つの研究所と英国のFraunhofer CAPが協力して、量子センサを実験室から産業界に導入した。このプロジェクトは2019年から2023年まで実施され、Fraunhofer研究機構とバーデン・ヴュルテンベルク州経済労働観光省(Baden-Württemberg Ministry of Economic Affairs, Labor and Tourism)から1,000万ユーロの資金提供を受けた。