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Science/Research 詳細

新開発の量子もつれ光源により、世界最大の超広帯域量子赤外分光を実現

January, 29, 2024, 京都--京都大学電子工学専攻の田嶌俊之 特定研究員、向井佑 同助教、岡本亮 同准教授、竹内繁樹 同教授らの研究グループは、島津製作所の徳田勝彦 主任研究員らの研究グループと共同で、波長2μm~5μmという広い波長域で赤外光子を発生する超広帯域量子もつれ光源を開発、それを用いた量子赤外分光に世界で初めて成功した。

電子や光子などの量子は、通常の物体とは異なった振るまいをする。その量子の個々の振るまいや相関(量子もつれ)を制御することで、飛躍的な計算能力を実現する量子コンピュータや、盗聴不可能な暗号を実現する量子暗号、さらに、従来の計測技術の限界を超える量子センシングなど、「量子技術」の研究が精力的に進められている。特に、量子もつれ光を用いた「量子赤外分光」は、可視域の光源と検出器のみで、赤外域の分光が可能になり、物質や分子の鑑別に幅広く利用されている赤外分光装置の大幅な小型化・高感度化・低コスト化が期待される技術として注目されている。しかし、これまでは、量子もつれ光の帯域が赤外域で狭い範囲 ( 1μm以下)に限られており、量子赤外分光の帯域を制限していた。

今回の研究成果により、今後、さまざまな物質の鑑別同定が、スマートフォンのカメラなどにも利用されているシリコン光検出器を用いた、小型で高性能な量子赤外分光装置により可能となり、医療やセキュリティ、環境モニタリングなどで活用されることが期待される。

研究成果は、2024年1月12日時現地時間に米国の国際学術誌「Optica」にオンライン掲載された。

(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)