December, 28, 2023, Lausanne--EPFLの研究者は、至る所にある既存レーザ技術を大幅に改善するハイブリッドデバイスを開発した。
EPFLのフォトニックシステム研究所(PHOSL)のチームは、半導体レーザの性能を向上させ、より短い波長の生成を可能にするチップスケールのレーザ光源を開発した。EPFL工学部のCamille Brès教授とポスドク研究者Marco Clementiがリーダーとなっており、この先駆的な研究は、フォトニクスの分野における大きな進歩であり、テレコム、計測学、その他の高精度アプリケーションに影響を与える。
「Light: Science & Applications」誌に掲載されたこの研究は、PHOSLの研究者がLaboratory of Photonics and Quantum Measurementsと共同で、半導体レーザとマイクロ共振器を含むSiNフォトニック回路の集積に成功した方法を明らかにしている。この統合により、近赤外と可視光の両方で非常に均一で正確な光を放射できるハイブリッドデバイスが実現し、業界で長い間課題となっていた技術的ギャップを埋める。
「半導体レーザは、スマートフォンから光ファイバ通信まで、あらゆるものに見られる現代の技術に遍在している。しかし、その可能性は、コヒーレンスの欠如と可視光を効率的に生成できないことによって制限されてきた。われわれの研究は、これらのレーザのコヒーレンスを向上させるだけでなく、出力を可視スペクトルにシフトし、その使用のための新しい道を切り開く」(Brès)。
コヒーレンスとは、このコンテクスでは、レーザによって放出される光波の位相の均一性を指す。コヒーレンスが高いということは、光波が同期していることを意味し、非常に正確な色または周波数のビームにつながる。この特性は、計時や精密センシングなど、レーザビームの精度と安定性が最優先されるアプリケーションにとって非常に重要である。
精度の向上と機能性の向上
チームのアプローチでは、市販の半導体レーザとSiNチップを結合する。この小型チップは、業界標準のコスト効率の高いCMOS技術で作製されている。この素材の優れた低損失特性により、光が吸収されたり逃げたりすることはほとんどない。半導体レーザからの光は、微細な導波路を通って非常に小さなキャビティに流れ込み、そこでビームがトラップされる。マイクロリング共振器という、これらのキャビティは、特定の周波数で共振するように複雑に設計されており、目的の波長を選択的に増幅し、他の波長を減衰させることで、放出光のコヒーレンスを強化する。
もう1つの大きな成果は、市販の半導体レーザから発せられる光の周波数を2倍にすることができ、近赤外スペクトルから可視光スペクトルへの移行を可能にするハイブリッドシステムの能力である。周波数と波長の関係は反比例しており、周波数を2倍にすると波長は半分になる。近赤外スペクトルはテレコムに利用されているが、原子時計や医療機器など、より短い波長が必要な、より小型で効率的なデバイスを構築するには、一段と高い周波数が不可欠。
これらの短い波長は、キャビティ内に閉じ込められた光が、SiNに2次非線形性として知られるものを誘発する全光ポーリングと呼ばれるプロセスを経たときに達成される。このコンテクスでの非線形性とは、物質との相互作用から生じる、周波数に正比例しない光の挙動に大きな変化、つまり大きさのジャンプがあることを意味する。SiNは通常、この特定の2次非線形効果を招くことはなく、研究チームは、この効果を誘発するために、このシステムがキャビティ内で共振する光の能力を利用して、材料の非線形特性を誘発する電磁波を生成するという、洗練された工学的偉業を成し遂げた。
未来のアプリケーションを実現する技術
「われわれは既存の技術を改善するだけでなく、半導体レーザの可能性の限界を押し広げている。通信波長と可視波長のギャップを埋めることで、バイオメディカルイメージングや精密計時などの分野での新しいアプリケーションへの扉を開いている」と、このプロジェクトで重要な役割を果たしたMarco Clementiはコメントしている。
この技術の最も有望な用途の1つは、計測学、特にコンパクトな原子時計の開発である。ナビゲーションの進歩の歴史は、16世紀に海上で経度を計測することから、宇宙ミッションの正確なナビゲーションを確保し、今日では、より優れた地理的位置推定を達成するまでである。
「この重要な進歩は、まだ考え及ばない将来技術の基礎を築きく」とClementiは、話している。
フォトニクスと材料科学に関する深い理解は、デバイスの小型化と軽量化、レーザのエネルギー消費と製造コストの削減につながる可能性がある。基本的な科学的概念を業界標準の製造を使用して実用的なアプリケーションに変換するチームの能力は、予期せぬ進歩につながる可能性のある複雑な技術的課題を解決する可能性を強調している。