December, 19, 2023, 東京--NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)」において、産業技術総合研究所(産総研)、TDK株式会社、大阪大学大学院基礎工学研究科(大阪大学)は、ポスト5G/6Gの通信エリア拡大への利用が期待されるテラヘルツ帯メタサーフェス反射板の研究開発に取り組んでおり、今般、メタサーフェス反射板のテラヘルツ帯評価装置を開発した。
同装置は、疑似平面波を生成するオフセットグレゴリアンアンテナから成り、平面波照射下でのメタサーフェス反射板の性能評価をコンパクトなセットアップで実現する。さらに、同装置を活用し、6Gで利用が想定される220ギガヘルツ(GHz)と293 GHzの両周波数帯で動作するデュアルバンドメタサーフェス反射板の開発・実証に成功した。
研究グループは、今後は、同装置による高精度な反射板評価技術を活用して、メタサーフェス反射板のさらなる高機能化や高効率化を推進し、ポスト5G/6Gの通信エリアを基地局の増設なしに柔軟に拡大する技術基盤の確立を目指している。
今回の成果
(1)反射板テラヘルツ帯評価装置の開発
開発した装置は、パラボラ鏡、楕円鏡とその背後にあるフィード用のアンテナから成るオフセットグレゴリアンアンテナの構成により、疑似平面波を生成する。生成した疑似平面波を反射板サンプルに照射することで、最大330 GHzの広帯域にわたって、平面波照射下での反射特性評価ができる。アンテナ放射電界の振幅と位相の分布計測結果から得られる、疑似平面波のビームサイズは直径が約250 mmに達し、大型の反射板サンプルの評価が可能となる。
サンプルに照射されるビームが平面波ではなく不均一な位相分布をもつ場合、実使用と同等の反射性能を正確に評価できない。開発された装置と同等の疑似平面波を一般のコルゲートホーンアンテナを使用して生成するには、アンテナと反射板サンプル間の距離は30 m以上必要と試算されるが、同装置ではオフセットグレゴリアンアンテナとサンプル間の距離は約0.9 mで実現できた。
2)220/293 GHz動作デュアルバンドメタサーフェス反射板の開発・実証
同装置を活用して、6Gで利用が想定される220 GHzと293 GHzで動作するデュアルバンドメタサーフェス反射板を開発し、その実証試験を行った。開発したデュアルバンドメタサーフェス反射板は、誘電体基板表面に形成した金属周期構造を最適化し、高次の回折モードを制御することで、2周波数で同じ方向に高効率で反射するデュアルバンド異常反射動作を実現した。テラヘルツ帯での動作を担保するため、金属周期構造の試作誤差は4 μm以下に抑えている。入射角0°、反射角45°で設計した試作品に対し、開発した装置を用いて反射電力比の角度依存性を試験したところ、220 GHzと293 GHzの両周波数帯において、所望の方向への強い反射が見られた。そのほかの方向への不要反射は十分に抑制され、反射効率は両周波数で80%超に達しており、実用に資する高効率動作が確認された。また、測定された反射特性は設計と非常によく一致していた。この結果は、高精度の試作に加え、今回開発した反射板テラヘルツ帯評価装置の有用性を裏付けるものである。
今後の予定
産総研とTDK、大阪大学は、今回開発した330 GHzまでの反射板評価技術を活用して、テラヘルツ帯メタサーフェス反射板のさらなる高機能化や高効率化の研究開発を進める。これにより、ポスト5G/6Gの低消費電力かつ柔軟な通信エリア拡大を目指す。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)