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マイクロチップセンサ向け超強力材料を発見

December, 8, 2023, Delft--デルフト工科大学(Delft University of Technology)の研究者がマイクロチップセンサ用の新しい超強力材料を発見した。
Richard Norte助教授をリーダーとするTU Delftの研究チームは、材料科学の世界に影響を与える可能性を秘めた注目すべき新材料、アモルファス炭化ケイ素(a-SiC)を発表した。この材料は、その並外れた強度に加えて、マイクロチップの防振に不可欠な機械的特性を示す。したがって、アモルファス炭化ケイ素は、超高感度マイクロチップセンサの製造に特に適している。

潜在的な用途の範囲は膨大である。超高感度マイクロチップセンサや高度なソーラセルから、先駆的な宇宙探査やDNAシーケンシング技術までである。この素材の強度とスケーラビリティの利点は、非常に有望である。

中型車10台
「『アモルファス』の重要な特性をよりよく理解するには、ほとんどの材料は、複雑に作られたレゴタワーのように、規則的なパターンで配列された原子で構成されていると考えれば分かる。これらは、例えばダイヤモンドのような「結晶性」材料と呼ばれている。炭素原子が完全に整列しており、その名高い硬さに貢献している」(Norte)。

しかし、アモルファス材料は、原子が一貫した配置を欠いているレゴのランダムなセットに似ている。とは言え、予想に反して、このランダム化は脆弱性とはならない。実際、アモルファス炭化ケイ素は、このようなランダム性から生まれる強度の証拠である。この新素材の引張強度は10ギガパスカル(GPa)。「これが何を意味するのかを理解するには、ガムテープが切れるまで伸ばそうとすることを想像してみといい。10 GPaに相当する引張応力をシミュレートするには、約10台の中型車を端から端まで吊るしておかないと、ストリップが壊れにい」とNorteは説明している。

ナノストリング
研究チームは、この材料の引張強度をテストするために革新的な方法を採用した。材料の固定方法に不正確さをもたらす可能性のある従来法の代わりに、マイクロチップ技術に目を向けた。シリコン基板上にアモルファス炭化ケイ素の膜を成長させ、懸濁させることで、ナノストリングの形状を利用して高い引張力を誘導した。引張力を増大させた構造物を多数製作し、破損箇所を丹念に観察した。このマイクロチップベースのアプローチは、前例のない精度を保証するだけでなく、将来の材料試験への道を開く。

ナノストリングに着目した理由は何か。「ナノストリングは基本的な構成要素であり、より複雑な吊り下げ構造を構築するための基盤である。ナノストリングで高い降伏強度を示すことは、最も元素的な形で強度を示すことを意味する」

ミクロからマクロへ
さらに、最終的にこの素材を際立たせているのは、そのスケーラビリティである。炭素原子の単層であるグラフェンは、その優れた強度で知られているが、量産は困難である。ダイヤモンドは非常に強力であるが、本質的に希少であるか、合成にコストがかかる。一方、アモルファス炭化ケイ素はウエファスケールで製造でき、この非常に堅牢な材料の大きなシートを提供するのである。

「アモルファス炭化ケイ素の登場により、われわれは技術的な可能性に満ちたマイクロチップ研究の入り口に立っている」とNorteは結論付けている。

研究成果は、Advanced Materials誌に発表されている。