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先端技術向け新材料へのカギ、2D原子シート

December, 5, 2023, Philadelphia--光が天然に存在する物質とどのように相互作用するかは、物理学と材料科学でよく理解されている。しかし、ここ数十年の間に、研究者たちは、自然界に存在する物質に課せられた物理的な限界を超える新しい方法で光と相互作用するメタマテリアルを作製してきた。

メタマテリアルは、約100nmスケールで望ましい構造に作製された「メタ原子」の配列から構成されている。メタ原子の配列の構造は、正確な光と物質の相互作用を促進する。しかし、メタ原子はナノメートル以下、通常の原子に比べてサイズが大きいため、メタマテリアルの実用化には限界があった。

今回、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のBo Zhenをリーダーとする共同研究チームは、2次元アレイをらせん状に積み重ねることで、物質の原子構造を直接操作し、新しい光と物質の相互作用を利用する斬新なアプローチを発表した。このアプローチにより、メタマテリアルは現在の技術的限界を克服し、次世代のレーザ、イメージング、量子技術への道を開くことができる。この研究成果は、Nature Photonics誌に掲載された。

「これは、カードの山を積み重ねるのに似ているが、各カードを少しひねってから山に加える。このひねりは、全‘deck’の光への反応の仕方を変え、それが個々の層、あるいは従来のスタックが持っていない新たな特性を示すことができるようにする」と、論文の主任著者、ペンシルベニア大学芸術&科学部助教授Zhenはコメントしている。

Zhen Labのポスドク研究者、論文の筆頭著者Bumho Kimは、二硫化タングステン(WS2)を特定の角度でねじることで、ネジ対称性と呼ばれるものを導入した、と説明している。

「マジックは、ひねりをコントロールすることにある。レイヤーを特定の角度でひねることで、スタックの対称性が変わる。ここでいう対称性とは、光との相互作用など、物質の特定の特性が空間配置によってどのように制約されるかを指す」(Kim)。

この配置を原子スケールで微調整することで、研究チームは、これらの材料ができることのルールを曲げ、WS2の多層にわたるねじれを制御した。チームは3D非線形光学材料として知られるものを作ったのである。

Kimの説明によると、WS2は、特定の対称性を持つ。これにより光と特定のタイプの相互作用が可能になり、そこでは所与の周波数で2つのフォトンが材料と相互作用して、2倍の周波数、つまり第2高調波発生(SHG)と呼ばれるプロセスで新しい光子を生成する。

「しかし、2つのWSレイヤーが従来の0°あるいは180°とは異なるねじれ角でスタックされると、単層に存在していた全てのミラー対称性が破れる。この破れたミラー対称性は、個々の層には見られない、全く新しいキラル応答につながるため、非常に重要である」(Kim)。

Zhenによると、興味深い特性は、ねじれ角が逆転されるとキラルの非線形応答の符号が反転することである。これは、レイヤー間のねじれ角を変えるだけで非線形特性に対する直接制御ができることを実証している。つまり、カスタム応答を持つ光学材料の設計で革命的なレベルのチューナビリティである。

研究者らは、二重層から三層へ、さらにその先へと移行し、界面SHG応答が層間のねじれ角に応じて建設的または破壊的に干渉する方法を観察した。

4の倍数のレイヤーを持つスタックでは、「全ての界面からのキラル応答が加算され、同時に面内応答は相殺される。これにより、キラル非線形感受性のみを示す新材料が誕生する。この結果は、レイヤーの正確なスタックとねじれなしには達成できなかった」(Kim)。

研究チームは、ねじ対称性が、光の方向と強度を決定する光の一部である材料内の光の電場に対する新しい選択性を可能にすることを確認した。さらにKimは、ねじ対称性により、ねじれた 4 層と 8 層のスタックで、光が反対のらせん方向に進む逆円偏光の第 3 高調波(THG)発生という新しい種類の光の発生が可能になることを発見した。これは構成する WS2単層には見られない。

「人工的なねじ対称性を加えることで、ナノスケールで非線形の光学円選択性を制御できる」(Kim)。

この技術を実験的にテストすることで、研究者らは、ツイストWS2スタックの多様な構成に固有の予測非線形性を検証した。チームは、ねじれたWS2における新しい非線形応答と循環選択性を観測した。それは天然に存在するWS2には見られないものであり、非線形オプティクスの分野に深い意味を持つ可能性のある新事実である。

(詳細は、https://penntoday.upenn.edu)