November, 29, 2023, Leuven--Imecは、薄膜イメージセンサへのピン留めフォトダイオード構造統合成功を発表した。
ピン留めフォトゲートとトランスファーゲートを追加することで、1μmの波長を超える薄膜イメージャの優れた吸収品質を最終的に活用し、コスト効率の高い方法で可視光を超えた光を感知する可能性を解き放つことができる。
赤外光など、可視光以外の波長を検出することには、明らかな利点がある。アプリケーションには、煙や霧を通して「見る」自律走行車のカメラや、顔認識でスマートフォンのロック解除カメラなどがある。可視光はシリコンベースのイメージャで検出できるが、短波赤外(SWIR)など、より長い波長には他の半導体が必要になる。
III-V族材料の使用により、この検出限界を克服することができる。しかし、これらの吸収体の製造はコストがかかるため、その使用が制限される。これに対し、最近では、薄膜吸収体(量子ドットなど)を用いたセンサが有望な選択肢として浮上している。それらは、吸収特性に優れており、従来の(CMOS)読み出し回路との一体化が可能である。しかし、このような赤外線センサはノイズ性能が劣るため、画質が悪くなる。
すでに1980年代には、シリコンCMOSイメージセンサにピン留めフォトダイオード(PPD)構造が導入された。この構造では、追加のトランジスタゲートと特殊なフォトディテクタ構造が導入されており、統合が始まる前に電荷を完全に排出することができる(kTCノイズや前のフレームの影響のないリセット動作が可能)。その結果、低ノイズと電力性能の向上により、PPDはシリコンベースのイメージセンサの民生市場で優勢となっている。シリコンイメージングに限らず、この構造を取り入れることは、これまで不可能だった。2つの異なる半導体系をハイブリッド化することが困難だったからである。
今回、imecは、薄膜ベースのイメージセンサの読み出し回路にPPD構造の組込成功を実証している。この種のものとしては初めてである。SWIR量子ドットフォトディテクタを、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)ベースの薄膜トランジスタとモノリシックにハイブリダイズしてPPD画素にした。その後、このアレイはCMOS読み出し回路で処理され、優れた薄膜SWIRイメージセンサを形成した。「プロトタイプの4Tイメージセンサは、従来の3Tセンサの>100e-と比較して6.1e-という驚くべき低読み出しノイズを示し、その優れたノイズ性能を実証した」と、imecの「薄膜ピンフォトダイオード」プロジェクトリーダ、Nikolas Papadopoulosはコメントしている。その結果、赤外線画像をノイズ、歪み、干渉が少なく、より正確で詳細に捉えることができる。
imecの「Pixel Innovations」プログラムマネージャPawel Malinowskiは、「imecでは、薄膜フォトダイオード、IGZO、イメージセンサ、薄膜トランジスタに関する専門知識を結集し、赤外線とイメージャの世界をつなぐ最前線に立っている。このマイルストーンを達成することで、現在のピクセルアーキテクチャの限界を超え、最高性能の量子ドットSWIRピクセルと手頃な価格の製造を組み合わせる方法を実証した。将来的には、この技術をさまざまなタイプの薄膜フォトダイオードに最適化し、シリコンイメージング以外のセンサにも適用範囲を広げていく」と話している。
(詳細は、https://www.imec-int.com/)