November, 22, 2023, Pasadena--生物、化学、物理学などでは、1ピコ秒以下の非常に短いパルスを放射できるレーザが特に有用である。このような小さな時間スケールで動作するレーザを使用することで、研究者は、化学反応における分子結合の形成または切断、または材料内の電子の移動など、非常に高速に発生する物理および化学現象を研究することができる。
これらの超短パルスは、ピーク強度が非常に大きくても平均出力が低いため、生体組織などのサンプルを加熱したり、燃え尽きさせたりすることさえも避けることができるため、イメージングアプリケーションにも広く使用されている。
カリフォルニア工科大学(Caltech)の電気工学&応用物理学助教授Alireza Marandiは、サイエンス誌掲載の論文で、フォトニックチップ上にモードロックレーザとして知られるこの種のレーザを製造するために同氏のラボが開発した新しい方法を説明している。レーザはナノスケールの部品を使用して作られており、現代のエレクトロニクスに見られる電気ベースの集積回路(IC)と同様の光ベース回路に統合することができる。「われわれが関心を持っているのは、モードロックレーザをよりコンパクトにすることだけではない。われわれは、ナノフォトニックチップ上で高性能なモードロックレーザを作り、それを他のコンポーネントと組み合わせることを楽しみにしている。その時こそ、ICで完全な超高速フォトニックシステムを構築できる。これにより、現在メートルスケールの実験にとどまっていた豊富な超高速科学技術が、ミリスケールのチップに結びつく」(Marandi)。
この種の超短パルスレーザは研究にとって非常に重要であり、今年のノーベル物理学賞は、アト秒パルスを生成するレーザの開発で3人の科学者に授与された。しかし、このようなレーザは現在、非常に高価でかさばるものである。同氏は、手頃な価格で導入可能な超高速フォトニック技術の開発を目的として、桁違いに安価で小型のチップでそのようなタイムスケールを実現する方法を模索している。
「これらのアト秒実験は、ほぼ超短パルスモードロックレーザでしか行われない。中には1,000万ドルのコストがかかるものもあり、そのコストのかなりの部分がモードロックレーザである。これらの実験や機能をナノフォトニクスで再現する方法を考えるのが非常に楽しみである」(Marandi)。
Marandiの研究室で開発されたナノフォトニックモードロックレーザの心臓部は、独自の光学的および電気的特性を持つ合成塩であるニオブ酸リチウム(LN)で、この場合、外部のRF周波数電気信号を印加することでレーザパルスを制御および成形することができる。このアプローチは、キャビティ内位相変調によるアクティブモードロッキングとして知られている。
「約50年前、研究者たちはテーブルトップ実験でイントラキャビティ位相変調を使用してモードロックレーザーを作製したが、他の技術と比較してあまり適していないと判断した。しかし、われわれの統合プラットフォームには最適であることを確認した」と、論文の筆頭著者、Marandiラボの元ポスドク研究者Qiushi Guoは話している。
「コンパクトなサイズに加えて、われわれのレーザは様々な興味深い特性も示している。例えば、出力パルスの繰り返し周波数を広い範囲で精密調整できる。これを活用して、周波数計測と高精度センシングに不可欠なチップスケールの安定化周波数コム光源を開発することができる」(Guo)。同氏は、現在ニューヨーク市立大学先端科学研究センタ助教授。
Marandiによると、この技術をさらに短く、より高いピークパワーで動作できるように改良を続け、50フェムト秒(fs)を目標としている。これは4.8 psの長さのパルスを生成する現在のデバイスの100倍向上になる。
この研究成果は、「Ultrafast mode-locked laser in nanophotonic lithium niobite」と題され、Science誌に掲載された。