Science/Research 詳細

ナノ構造中のテラヘルツ電磁波と電子の超強結合状態の高感度電気的検出に成功

November, 13, 2023, 東京--東京大学 生産技術研究所の黒山和幸助教、平川一彦 教授、および同大学 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦特任教授、權晋寛特任准教授は、スプリットリング共振器と呼ばれるテラヘルツ帯域に共鳴周波数を持つオンチップの光共振器と半導体ヘテロ構造中の電子を強く相互作用させ、光と電子の両方の性質を持つハイブリッド結合状態を生成するとともに、その量子状態を量子ポイントコンタクトと呼ばれる電気的な狭窄(きょうさく)構造を用いることで、電気的に読み出す技術を確立した。
研究では、単一オンチップのテラヘルツ光共振器とGaAs(ヒ化ガリウム)半導体中の2次元電子系との間の超強結合状態を、近傍に設置した量子ポイントコンタクトの電流を測定することによって観測した。先行研究では、多数の光共振器を整列させ、その光透過率の平均値を測定する方法が主に用いられてきた。しかし、量子情報処理技術などへの応用を見据えると、単一の光共振器の量子状態を読み出す技術の確立が強く望まれていた。
この研究では、従来の光測定による手法ではなく、電気的な測定手法を用いることで、単一のテラヘルツ光共振器と電子系が結合した量子状態を検出することに成功した。この研究成果は、光と物質の結合状態の基礎学理の構築に大きく貢献するのみにとどまらず、レーザ技術などをはじめとする光による物質の新奇な量子制御技術や、テラヘルツ帯域における量子情報通信技術への応用が期待される。

(詳細は、https://www.iis.u-tokyo.ac.jp)