コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

ブリルアン散乱による課題にテイパー光ファイバで対処

November, 6, 2023, Rochester--ロチェスター大学の研究者は、長寿命音波で強力な光学音響相互作用を達成した。
光子からなる光ビームがファイバを通過すると、フォノンからなる音波を生成する振動が発生する。ブリルアン散乱と呼ばれるこの現象は、音波と光波をオプトメカニカル的に「結合」させるために研究者によって利用されてきた。この結合により、光子によって運ばれた情報を、光波の約100万倍の速度で移動するフォノンに変換または変換することができる。

光音響結合により、研究者は変換された情報をより簡単に読み取り、操作できるようになった。しかし、これまで研究者が使用してきたブリルアン散乱技術の多くは、音波がすぐに消滅する原因となる標準的なファイバ形状に依存しており、カップリングの有効性が制限されていた。

今回、ロチェスター大学の研究チームは、ミクロンサイズのウエストを持つ光ファイバを用いて、伝搬する光波と長寿命の音波を、強い光音響相互作用で結合する方法を実証した。

「これは、これまでに達成されたことのないユニークで望ましい組み合わせである」と、ロチェスター大学光学研究所助教授William Renningerの研究グループのPh.D候補、Wendao Xuは話している。同氏は、このブレークスルーを説明するOpticaの論文の筆頭著者。

このブレークスルーにより、光パルスによって運ばれる情報は、第2光パルスが情報を「読み取る」のに十分な長さのゆっくりと伝播する音波に一時的に保存できる。この成果は、光ストレージ、RFフォトニクスフィルタリング、光遅延線などの応用が期待できる。

この研究は、マックス・プランク光科学研究所で開催されたWOMBAT 2022 Workshop on Optomechanics and Brillouin ScatteringでBest Presentation Awardを受賞し、共著者でRenninger研究室のPh.D候補、Arjun Iyerが発表した。

「Wendao、Arjun、および東京大学の共同研究者は、この新しいプラットフォームの将来性を実証する上で素晴らしい仕事をした。次世代のデバイスと実世界のアプリケーションに力を入れ始めるにあたり、われわれ全員が張り切っている」(Renninger)。

光ファイバにおけるブリルアン散乱:課題の克服
「音響波の振幅は、伝わるにつれて小さくなり続ける。基本的に、現在人々が扱っている影響の大きいブリルアン散乱は、すべて強い相互作用を生み出すが、音響波はGHz範囲で周波数が高い。周波数が高ければ高いほど、波が消滅するまでに実際の伝播時間は短くなる」と、Xuは説明している。

Xuのテーパー光ファイバデバイスは、強力な相互作用とより長い音響寿命の両方を実現している。これは、クラッド(コーティング)を除去したマルチモードガラスファイバで構成されている。ファイバの中心を加熱し、同時に機械的張力を加えてファイバの両端を伸ばすことで、Xuと共同研究者はファイバ内にしっかりと閉じ込められた対称的な「ウエスト」を作り出した。

このウエストは、「ファイバテーパーからこれまでに観察された中で最強のブリルアン結合強度を生み出し、あらゆるシステムで最大のオプトメカニカル結合強度に匹敵する理想的なオプトメカニカルオーバーラップ」をもたらす。

さらに、デバイスが生成するフォノン寿命(約2µs)は、光パルスによって運ばれる情報を、2番目の光パルスが情報を読み取る前に、このゆっくりと伝播する音響波に比較的長い期間一時保存できるほど長い。

テーパ光ファイバ装置
Iyerによると、Xuの功績は二重である。「1つはテーパーファイバデバイスというシステムで、これまであまり注目されていなかった音響波ファミリーをサポートしている」。「もう 1 つはプロセス自体である。2 つの異なる光空間モード間の相互作用を使用して、必要なものを取得する」(Iyer)。

このプロセスは、同氏によると、フォノンの寿命が長い強力な相互作用を実現するための物理学を含め、既存技術を改善するために直ちに適応し、適用できる。たとえば、フォトニックフィルタで不要なRF周波数を検出してフィルタリングしたり、光ファイバシステムの遅延差を補正するために光ファイバ伝送遅延を生成したりする。

一方、テーパードファイバシステムは、研究には有用だが、研究室外での実用には、恐らく脆弱すぎるとIyer氏は見ている。「これらは、ミクロンサイズのガラスフィラメントがぶら下がっているだけだ」(Iyer)。

とは言え、Iyerによると、研究者はすでに、このシステムを実際のアプリケーション向けにパッケージ化する方法を模索している。
(詳細は、https://www.rochester.edu)