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フレキシブルファイバで末梢神経を研究

November, 1, 2023, East Lansing--末梢神経障害は、100種類以上あり、脳と脊髄以外の神経系の一部に影響を及ぼす。末梢神経の損傷は、手や足などの四肢の脱力感、しびれ、痛み、消化や排尿の問題につながる可能性がある。

現在、米国の研究者は、動物モデルの末梢神経障害を研究するために柔軟な光ファイバを活用する新しいツールの開発を報告している(Nat. Methods, doi: 10.1038/s41592-023-02020-9)。ハイドロゲルから作られたファイバは、動物の自然な動きを妨げることなく、末梢神経を光遺伝学的に活性化するために埋め込まれ使用できる。

脳を超えて
この研究の著者、ミシガン州立大学のXinyue Liuとそのチームは、光遺伝学(光を使って特定の細胞集団を正確に制御できる強力なツール)の使用を脳以外にも拡大することを目指した。例えば、マウスのニューロンは光に反応するように遺伝子操作され、照明によって細胞が活性化または阻害される。

「[Optogenetics]は、脳と神経系の様々な細胞がどのように機能するかを調べるために、神経科学で広く使用されている。しかし、オプトジェネティクスを適用する際の課題の1つは、移動中に機械的歪を感じる末梢神経に光をデリバリすることである」(Liu)。

シリカファイバなどの硬い材料で構成された従来の光送達デバイスは、軟部組織を損傷し、動物の自然な行動を妨げる可能性がある。すると、動物の自然な動きは、埋め込まれたファイバに繰り返し機械的歪をもたらし、光透過効率と信頼性を低下させる。

耐疲労性ファイバ
研究チームは、可視域での光学的透明性と調整可能な機械的特性を持つハイドロゲルを用いた新しいアプローチを採用した。ハイドロゲル材料は柔らかく、含水率が高いが、繰り返される変形による疲労破壊の影響を受けやすいままである。
疲労に強いハイドロゲル光ファイバを作製するために、研究チームはまずハイドロゲルの光学的および機械的特性を最適化する必要があった。チームは、ハイドロゲルファイバ内に高分子ナノ結晶ドメインを導入して、亀裂の伝播を防ぎ、繰り返しの延伸に対するファイバの弾力性を確保した。最終的に、ファイバの光損失は1.07 dB cm−1と低く、ヤング率1.6MPa、延伸性200%、30,000回の延伸サイクルで疲労強度1.4MPaだった。

概念実証の検証として、ハイドロゲルファイバをマウスの坐骨神経に移植した。慢性炎症性疼痛のマウスモデルでは、ハイドロゲルファイバを通る473nmパルスレーザで坐骨痛を抑制できることが分かった。

「われわれは、ハイドロゲル光ファイバの合成と製造を拡大する方法を模索している。これは、大型動物や霊長類の範囲にも適合する可能性がある。われわれの発見は、カスタマイズされたファイバ設計を通じて、心臓や消化器系など、末梢神経以外の他の可動性器官にハイドロゲルファイバによる光送達技術を適用できる可能性を示している」とLiuはコメントしている。