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Science/Research 詳細

耳への予期せぬ出入り口が聴覚回復の新たな可能性を開く

September, 13, 2023, Rochester--国際的な研究者チームは、内耳に薬物を送達する新しい方法を開発した。
この発見は、脳内の体液の自然な流れを利用し、わずかに分かっている蝸牛へのバックドアを採用することで可能だった。内耳の有毛細胞を修復する遺伝子治療を行うために組み合わせて、研究者は聴覚障害マウスの聴力を回復することができた。

「これらの発見は、脳脊髄液輸送が、成人の内耳への遺伝子送達のための利用可能な経路を構成し、遺伝子治療を使用してヒトの聴力を回復するための重要なステップを表す可能性を示している」と、Science Translational Medicine掲載の新しい研究のシニア著者MaikenNedergaard、MD、DMScはコメントしている。

Nedergaardは、ロチェスター大学(University of Rochester)とコペンハーゲン大学(University of Copenhagen)のトランスレーショナル神経医学センタ(Center for Translational Neuromedicine)の共同ディレクタ。この研究は、両大学の研究者と、スウェーデンのストックホルムにあるカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)の実験聴覚学研究室(Laboratory of Experimental Audiology)のBarbara Canlon, PhDが率いるグループとのコラボレーションの成果だった。

軽度から完全難聴と予測される世界中の人々の数は、今世紀半ばまでに約25億人に増加すると予想されている。主な原因は、重要な遺伝子の突然変異、加齢、騒音曝露、およびその他の要因による、脳への音の中継に関与する蝸牛にある有毛細胞の死または機能の喪失。

有毛細胞はヒトや他の哺乳類では自然に再生されませんが、遺伝子治療は有望であることが示されており、別の研究で新生児および非常に若いマウスの有毛細胞の機能修復が成功している。しかし、マウスと人間の両方とも、年をとるにつれて、すでに繊細な構造である蝸牛は側頭骨に取り囲まれる。この時点で、蝸牛に到達し、手術を介して遺伝子治療を行う取組は、この敏感な領域に損傷を与え、聴力を変えるリスクがある。

新しい研究では、研究者たちは、蝸牛水管と呼ばれる、わずかに分かっている蝸牛への通路について説明している。名前は記念碑的な石造りの建築のイメージを想起させるが、蝸牛水管は一本の髪の毛以下の細い骨のチャネル。耳で圧力のバランスをとる役割を果たしていると思われているが、新しい研究は、蝸牛水管が内耳に見られる脳脊髄液と脳の残りの部分との間の導管としても機能することを示している。

科学者たちは、リンパ系のメカニズムのより明確な全体像を開発中である。これは、2012年にNedergaard研究所によって最初に記述された老廃物を除去する脳のユニークなプロセスである。リンパ系は脳脊髄液を脳組織の深部に送り込み、有毒なタンパク質を洗い流すので、神経疾患の治療薬開発における大きな課題、脳に薬物を送達する可能性のある新しい方法として研究者が眼を向けている。

研究者はまた、リンパ系によって駆動される体液の複雑な動きが耳を含め、目と末梢神経系に及ぶことを発見した。新しい研究は、リンパ系の薬物送達の可能性をテストする機会を表すと同時に、聴覚系のこれまで到達できなかった部分を標的にしている。

研究者たちは、多くのイメージング技術とモデリング技術を使用して、脳の他の部分からの液体が蝸牛水管を通って内耳にどのように流れるかについての詳細な描写を展開することができた。次に、チームは、頭蓋骨の基部にある脳脊髄液の大きな貯蔵庫である大槽にアデノ随伴ウイルスを注入した。ウイルスは蝸牛水管を介して内耳に入り、小胞グルタミン酸トランスポータ-3と呼ばれるタンパク質を発現する遺伝子治療を行い、有毛細胞が信号を送信し、成体聴覚障害者マウスの聴覚を救出した。

「耳へのこの新しい送達経路は、聴覚研究の進歩に役立つだけでなく、進行性の遺伝的媒介性難聴を持つ人間に移転された場合にも有用であることが証明される」とNedergaard氏は説明している。

(詳細は、https://www.urmc.rochester.edu/)