Science/Research 詳細

世界最高の給電能力を有した高速光通信の実証に成功

September, 7, 2023, 東京--日本電信電話株式会社(NTT)と、北海道国立大学機構北見工業大学(北見工大)は、1本の通信用光ファイバを用いて、高速かつ良好な通信品質を維持したまま10km以上先の無電源地点へ1W以上の電力を供給することに世界で初めて成功した。
この成果により、非電化エリアを含むあらゆる光通信の未踏エリアに高速光通信が提供可能になるほか、災害時に電源供給が失われた場合にも応急対応として光ファイバを用いた通信を確立できると期待される。
今回の成果は、スコットランドで開催される光通信技術に関する世界最大の国際会議(49th European Conference on Optical Communications(ECOC))に採択され、現地時間の2023年10月4日に発表する。

研究の成果と詳細
この研究では現在一般的に使用されている通信用光ファイバと同じ直径の細さで4個の光の通り道(コア)を有するMCFを用い、世界最高の自己給電伝送能力を実現した。

①マルチコア光ファイバ(MCF)
今回使用したMCFは、既存の光ファイバと同じ細さで、かつ各コアが既存光ファイバと同等の伝送特性を有するため、通常の光通信(光給電を必要としない光通信)にも既存の伝送装置と組み合わせて使用することができる。また、各コアが独立して(コア間で光信号の混信を生ずることなく)使用できるため、任意のコアを給電用にも通信用にも、あるいはその双方に割り当てることができる。
検討では光給電量を最大とするため、4コアに波長1550nmの給電用の光源を入力した。更に、4コアのうちの2コアを用い、各コアに波長1310nmの上りおよび下り信号を割りあてることで双方向の光通信を実現している。また、2コアの組合せを2セット設定することもでき、これにより2つの独立した通信システムを構成することが可能。

②世界最高の自己給電伝送能力
光給電能力は伝送距離と供給電力の積で表すことができる。この検討では、MCFの適用で単位断面積当りの供給電力を最大化し、光給電効率の劣化要因となるシステム内の戻り光を抑制することで、MCFを14km伝送後に約1Wの電力を得ることができた。光給電能力は14W・kmで、これは世界トップの性能指数。
さらに、自己給電による伝送速度10Gbit/sの双方向光通信も実証した。10Gbit/sの伝送速度は、現在、一般ユーザ用にサービス提供している光通信の最高速の伝送速度。また、2コアで上り下りの1システムの構成について検討を行い、14km伝送後で良好な伝送特性を確認した。伝送速度と伝送距離の積を、自己光給電伝送における伝送性能の指標と考えると、この検討では140Gbit/秒・kmの世界最高の伝送性能を実現することができまた(図2右参照)。

(詳細は、https://group.ntt/jp)