Tau-PET、アルツハイマー病患者の未来への窓

September, 5, 2023, Geneve--UNIGE-HUGチームは、アルツハイマー病による認知機能低下を予測することを目的に、脳内のタウタンパク質の存在を検出するためのイメージングの価値を実証している。

最も一般的な神経変性疾患の1つ、アルツハイマー病は、記憶と自律性の進行性の喪失につながる。それは、脳内の神経毒性タンパク質、すなわちアミロイドプラークおよびタウタングルの蓄積によって特徴付けられる。何１０年にもわたる病理学の静かな発展により、非常に早期の診断は、疾患過程の可能な限り早い段階で行動を起こすことができるようにするために最も重要である。ジュネーブ大学(UNIGE)とジュネーブ大学病院(HUG)のチームは、タウタンパク質を視覚化するための新しいイメージング技術、タウPETが、患者の認知機能低下予測で通常使用されるイメージング技術よりもはるかに優れていることを実証した。Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Associationに掲載されたこれらの結果は、患者に早期かつ個別化された解決策を提供するために、タウPETを臨床ルーチンに迅速導入することを支持すると論じている。

今日、アルツハイマー病の主な診断ツールの1つは、脳内の特定の病理学的プロセスを視覚化するためにトレーサを注入するイメージング技術、陽電子放出断層撮影法(PET)である。「PETは、数時間以内に消える低レベルの放射性トレーサを患者に注入する必要がある。トレーサは、検出したいヒト分子に結合するように設計されており、PETトモグラフィで見ることができる」と、UNIGE医学部放射線・医療情報学科の准教授、HUGの核医学・分子イメージング部門の主任医師、Valentina Garibottoは説明している。

「アミロイドのための特定のトレーサは20年前から存在しており、脳のエネルギーリソースを正しく使用する能力を示すグルコース代謝をモニタするトレーサーは古くから存在していた。しかし、アルツハイマー病は複雑であり、これら2つの技術では全ての答を提供するのに十分ではない」

イメージング技術の比較
フロルタウシピル(flortaucipir)は、タウタンパク質に結合する放射性トレーサ。製薬会社によって開発され、2020年に食品医薬品局(FDA)によって承認された。これにより、タウの蓄積と脳内の分布を検出して、疾患の臨床症状におけるその役割を正確に評価することができる。UNIGEとHUGの研究者は、アミロイドPET、グルコース代謝PET、またはタウPETのどのイメージング法が、アルツハイマー病による将来の認知機能低下を最もよく予測するかを決定することを考えていた。HUGメモリセンタでは約90名の参加者が募集された。

「われわれの結果は、様々なPET測定がすべて認知症状の存在に関連しており、アルツハイマー病の強力な指標としての役割を確認していることを示しているが、タウPETは、症状が最小限の個人でも認知機能低下速度の予測に最適だった」と、Garibotto教授のチームのPh.D学生、この研究の筆頭著者Cecilia Boccaliniはコメントしている。

個人差の検出
アミロイドプラークは、必ずしも認知または記憶喪失を伴うわけではない。しかし、タウの存在は臨床症状と密接に関連している。その欠如または存在は、患者の状態が安定しているか急速に悪化するかの主な決定要因である。タウを視覚化するためのイメージング技術を開発することは、より困難だった。主にその濃度が低く、特に複雑な構造のためである。

「このブレークスルーは、アルツハイマー病のより良い管理にとって非常に重要である。最近、アミロイドを標的とする薬が肯定的な結果を示している。タウタンパク質を標的とする新薬も有望のようだ。脳がさらなる損傷を受ける前に、新治療法により、できるだけ早く病理を検出することで、患者の将来と生活の質(QoL)に大きな影響を与えることができると考えている」とValentina Garibottoは指摘している。「同様に、脳の様々な領域におけるタウの位置が症状にどのように影響するかを理解するために、タウの分布をマッピングし始めている」。
実際、その病気の原因と様々な段階は、これまで考えられていたよりも均一性がかなり低いことが分かってきており、同じ現象に対する個々の感受性をよりよく理解する必要がある。

これらの結果は、個々の予後を評価し、各患者に最も適切な治療戦略を選択するために、タウPETを日常的な臨床評価に組み込むことを支持する強力な議論である。