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Science/Research 詳細

アルツハイマー病進行で考えられる炎症の原因を解明

August, 2, 2023, Saratoga--アルツハイマー病に関係する最も重要な遺伝的リスクファクタ(危険因子)、apoE4が炎症から脳を保護できない理由の考えられる説明が研究で明らかにされている。

アルツハイマー病は、アミロイドベータタンパク質のプラーク蓄積、慢性炎症、脳の神経機能障害によって特徴付けられる。この病気の最も重要な遺伝的リスクファクタは、Apo E、アポリポタンパク質 Eの変異体。これは、特に、その病気の始まりを促進することで知られている。アルツハイマー病全員の半分以上は、この変異体を持っているが、病気の進行へのapoE4への正確な影響は、分からないままだった。

ヘルシンキ大学で先頃完了した研究は、apoE4遺伝子とアルツハイマー病の根底にある人の身体の免疫系の一部とのより正確な関係を特定した。これは、補完的システムとして知られており、それは異質細胞の破壊に貢献し、身体の炎症反応を簡単に始動させる。

「われわれは、apoE4が、免疫の調整因子、ファクタHとの結びつきが不十分であることを確認した。ファクタH分子は、補体媒介炎症を阻止する際に極めて重要である」とKarita Haapasaloは、指摘している。同氏は、ヘルシンキ大学、炎症および感染研究グループを主導するその研究の主席研究者

「通常、apoEはファクタHを脳でアミロイドベータ凝集体に結びつける。これにより局所的炎症が抑制される。しかし、apoE4はそうしない」と同氏は指摘している。これは結果的に、脳における有害なアミロイドベータの凝集と炎症となる。

Haapasaloによると、ファクタHとapoE4の結合は、アルツハイマー病の始まりにつながる脳の変化を阻止する潜在的なソリューションを提供できる。そのような架橋分子を探すためにさらなる研究が、間もなく行われる。

病気のメカニズムの理解が、よりよい治療を決めるためのカギ
アルツハイマー病に関連するアミロイドベータ凝集体は、記憶障害の診断前数10年、脳で形成が始まる。これらの変化に内在するメカニズムは、十分に知られていないので、薬の開発は、すでに起こったことを止める、あるいは変化を遅らせることに焦点を当てている。

「現在使われている薬は、その病気そのものの始まりを阻止することはない」とHaapasaloは確言している。

アルツハイマー病では、毎年、1000万人以上の症例で、記憶障害がゆっくりと進行する。人口の高齢化により、その病気の患者数は著しく増加する。将来的にアルツハイマー病は、人的被害を増やし、公衆衛生や経済の重荷となる。

「アルツハイマー病の始まりに影響を及ぼす分子メカニズムを決定することは、将来、治療薬や治療を開発する上で重要である」