August, 1, 2023, Columbia--Mateus Corato Zanarellaは、コロンビア大学で可視光集積フォトニクスプロジェクトに取り組んでいて、一貫した問題を明らかにした。デバイスを動かしテストするためのチューナブル、狭線幅レーザ光源が存在しないことである。
「ハイパフォーマンス可視光レーザは、嵩張り、高価であるので、ほとんどの研究室は、利用することが難しい」。同氏は、研究成果「UV近傍からNIR波長までの広帯域チューナブル狭線幅のチップスケールレーザ」をNature Photonicsに発表した。同氏は、コロンビア工学部Lipson Nanophotonics Groupの電気光学博士課程学生、論文の筆頭著者。
現在、利用できる可視光レーザはベンチトップユニットであり、研究設定外での利用が困難。しかし、このタイプのレーザは、Zanarellaによると、量子オプティクス、光時計、原子および分子物理学、AR/VR用デイスプレイ、バイオセンサ、バイオイメージングなどハイインパクトアプリケーションで必要である。「その潜在性を実現するためにチームは、近UVからNIRまでの全スペクトルで、狭線幅、チューナブル可視レーザを必要としている」(Zanarella)。
コンパクト、安価、高性能可視レーザを想定して、チームは、ソリューション探求に集積フォトニクスを採用した。
これらの「ハイパフォーマンス可視光レーザ」は、爪の先に乗るほどに小さく、近紫外から近赤外までの純粋な、制御可能な光を生成できる。これらは、赤よりも短波長で、初のチューナブル、狭線幅チップスケールレーザであり、特徴は最小フットプリント、他の404nmレーザなどよりも最短波長である。レーザの色は、精密に可変でき、高速であり、最高267ペタヘルツ/秒が可能である。
「これまでは、可変、狭線幅可視光レーザを必要とする技術を縮小、大量導入することは不可能だった。注目に値する例は、量子オプティクスである。これは、単一システムで複数の色のハイパフォーマンスレーザを必要とする。われわれの成果により、既存および新技術のための完全集積可視光システムが可能になる」とMichal Lipsonは、コメントしている。同氏は、応用物理学教授、シリコンフォトニクス開発者、電気工学Higgins教授。
そのレーザシステムは、商用FPレーザダイオードとフォトニック集積チップ(PIC)で構成されている。これは、自己注入ロック(SIL)によりレーザ放出を変更するように設計されている、Zanarellaの説明によると、その出力光の一部をレーザキャビティに後方反射することでレーザ放出を変更する物理的プロセスである。
PICも各レーザダイオードが出力する光を純化するように設計されている。ダイオードとそのチップを組み合わせることで選択的、制御的光フィードバッガ可能になるので、PICによりレーザは、多数の色ではなく高純度シングルカラーを放出する。
「もっと正確に言うと、PICの低損失マイクロリング共振器ベースのフィードバックループは、単一波長を選択し、その光の一部をダイオード後方に反射する。この選択的光フィードバックにより、選択されたレーザ発振モードが、全ての他のモードに対して勝ちを制し、レーザの全ての光パワーがそれに崩壊し、狭線幅の単一周波数放出となった。オンチップ位相シフタによりマイクロリング共振器を電気的に制御することでわれわは、どの発振モードが勝つかを選択し、結果的に放出光の波長をチューニングする」
チップスケールレーザシステムは、最初のコンセプトからほとんど変わっていなかった。Zanarellaは、PIC設計と実験アプローチに改善を加えた。「われわれのアイデアが機能することが分かったah-hahの瞬間は、波長崩壊の兆候を初めて見たときだった」。
最初の設計は、2019年。その成果を利用してチームは、最終テストのために使用する新世代のデバイスを製造、テストした。
「われわれが克服すべき最大の課題は、可視光における高い損失特性緩和し、ほぼオクターブをカバーするロバストなブロードバンド動作を同時に達成する方法だった。赤よりも短い波長では、PICの結合と伝搬損失が大幅に増え、このためにハイパフォーマンスレーザがこれらの波長で実現できなくなった」。
結合損失問題を克服するためにチームは、光源としてFPレーザダイオードを選択した、これによりパフォーマンスロスを最小化した。これによりレーザは、記録的な短波長になり、高い光パワーに拡張できる。
しかし、FPレーザダイオードは、安価でコンパクトな固体レーザではあるが、同時に複数の波長の光を放出し、簡単に可変できない。それらと、チームの特別設計PICを組み合わせることでレーザ放出は、単一周波数、狭線幅、広い可変性に改良される。
「われわれは、全可視光波長で、材料吸収と表面散乱損失の両方を最小化するプラットフォームを設計することで伝搬損失問題を克服した。光をガイドするためにわれわれはSiNを利用した、全ての可視光波長に対して透明な、半導体産業では広く用いられている誘電体である」(Zanarella)。
最小限の吸収にもかかわらず、製造工程の不可避的な粗さにより、光は、まだ失われている。「われわれは、特殊なタイプのリング共振器のフォトニック回路を設計することで、この問題を解決した。リングは、円周に沿って幅が変わるので、狭い導波路のシングルモード動作特性が可能になる。結果としてフォトニック回路は、FPダイオードに波長選択光フィードバックを提供し、レーザは、所望の狭線幅単一波長で放出する」(Zanarella)。
結果は、スケーラブルで、光の全色で動作するロバストで多彩なプラットフォームである。
経済的なソリューション
コロンビアチームのチップスケールレーザは、チユーニング範囲、チューニング速度、線幅、パワー、SNRなどの性能指標は、高価なベンチトップレーザシステムでのみ可能な性能である。「これは、必要なレーザ光源のサイズのために、以前には可能でなかった、ポータブル原子時計などハイエンドアプリケーションに扉を開く」(Zanarella)。
それは、費用対効果の優れたソリューションである。現在入手できるチューナブル、狭線幅レーザは、数万ドルであるが、チップスケールのレーザは数十ドルである。デバイスのサイズが劇的に小さくなるとしても、パフォーマンス指標では、「われわれのチップスケールレーザは、チユーニング範囲、チューニング速度、線幅、パワー、SNRは、最先端のベンチトップシステムに匹敵する」(Zanarella)。
チームは、すでにこの技術の特許を申請している。
「前に進むためにわれわれはこれらのシステムを小型化したり拡大したりできるようにならなければならない。そうして最終的に大量導入技術に組み込まれる」(Lipson)。チップスケールレーザの光と電気のパッケージングをさらに開発する作業が進んでいる。狙いは、量子オプティクス、イメージング、センシングなどのアプリケーションで使いやすいスタンドオロンユニットにすることである。
「このプロセスで残っている克服すべき課題の一つは、レーザダイオードとPIC間の低結合損失パッケージングの実現である。最もエキサイティングな前進は、われわれのレーザが他のインパクトの大きな技術を可能にし、推進するのを見ることだ」(Zanarella)。