July, 27, 2023, Wien--微小なプラスチック粒子は環境問題である。それらは、生きた細胞にさえ浸透できる。そのような粒子を迅速かつ高感度に検出する方法がTU Wienで開発された。
マイクロプラスチックが問題であることはよく知られている。それらは、環境に害を及ぼす、微小で、ほとんで目に見えないプラスチック粒子である。例えば、動物が食べる場合である。とは言え、それほど小さな粒子の影響を評価することは難しかった。従来の方法では、検出が難しかったからである。直径1 µm以下のプラスチック粒子は、一般に「ナノプラスチック」と言われる。そのような微小粒子は、生きた細胞にさえ吸収される。
ウイーン工科大学(TU Wien)は、個々のナノプラスチック粒子でさえ検出できる計測法の開発に成功した。以前の技術よりも桁違いに高速な方法である。研究成果は、Scientific Reportsに発表された。新方法は、環境分析のための新しい計測デバイスのベースになる可能性がある。
波長で分子を検出
「われわれは、化学分析でよく使われる物理的原理を使用する。つまりラマン散乱である」と、TU Wienの”固体量子光学とナノフォトニクス”研究グループリーダー、Sarah Skoffは話している。このプロセスでは、分子はレーザビームを照射され、振動させられる。レーザ光のエネルギーの一部が、振動エネルギーに変換され、一方、残りのエネルギーは、光の形式で再放出される。
この光を計測し、最初に放出されたレーザ光のエネルギーと比較することで、分子の振動エネルギーが確定する。異なる分子は、異なる方法で振動するので、それがどの分子であるかを発見できる。
「しかし、通常のラマン分光法は、微小ナノプラスチックの検出には適していない。感度が低すぎ、時間がかかりすぎる」(Sarah Skoff)。
したがって研究チームは、この技術を著しく改善する物理的効果を探さなければならなかった。
ゴールドグリッドによる策
これをするために研究チームは、すでに生体分子検出に使われている同じ形式の方法を適用した。サンプルは、それにより、ゴールド製の非常に微細なグリッドに設置される。個々のゴールドワイヤは、わずか40nm厚、約60nm間隔である。「この金属グリッドは、アンテナとして機能する。レーザ光は特定の点で増幅される、したがって、そこでは、分子と非常に強い相互作用が生ずる。また、分子と、金属格子の電子との相互作用もあり、これにより分子からの光信号が、さらに増幅される」(Sarah Skoff)。
通常のラマン分光法では、分子が放出する光は、全てその波長に分解され、それがどの分子であるかが特定される。しかし、TU Wienチームは、その技術も簡素化できることを示した。「ナノプラスチック粒子の特徴的な波長については分かっているので、正確にこれらの波長で具体的に信号を探す」(Skoff)。「これが、計測スピードを数桁改善できることをわれわれは示すことができた。以前は、探している画像のシングルピクセルを得るのに10秒計測する必要があった。われわれの場合は、それはわずか数ミリ秒である」。ポリスチレン(発泡スチロール) による実験は、この高速でも、ナノプラスチック粒子は確実に検出できることを示していた、極めて低濃度でも可能である。他の方法と違い、この技術は、個々の粒子の検出も可能にする。
新しい計測機器の基盤
研究チームは、新技術の潜在的なアプリケーションをさらに詳細に研究することを考えている、例えば、環境的に関連がある、また血液など生体サンプルの粒子の検出に、それがどう使えるか。原理的には、これは、将来、実験室の外、自然界で直接サンプルを調べるために使える新しい計測機器の開発の基盤となる」(Skoff)。
(詳細は、https://www.tuwien.at/)