July, 26, 2023, 東京--東京工科大学工学部の野田龍介講師らの研究グループは、トンボが素早く逃げる様に飛行する機動飛行時の流体力学メカニズムを世界で初めて明らかにした。
トンボ固有の優れた機動飛行メカニズムの解明は、次世代の羽ばたき型飛行ロボット開発への応用も期待される。
研究成果
数値シミュレーションの結果、逃走飛行では通常飛行に比べて後翅が大きな迎角を取ることで、飛行効率を犠牲にして局所的な空気力の増加を生み出していることが世界で初めて明らかになった。
また、この空気力の増加は、トンボが前翅と後翅の羽ばたくタイミング(位相)を上手く変更することで、前翅の羽ばたきにより生じる空気の流れを利用し、後翅の翅表面に生じる空気力生成に大きく寄与する渦の安定化を促して実現していることが示唆された。
これは、従来の研究で示されてきたトンボの機動飛行時における前翅と後翅の羽ばたくタイミングとは異なり、新たな流体力学メカニズムにより逃走のための局所的な空気力の増加を実現している可能性を示している。
社会的・学術的なポイント
近年、回転翼型のドローンが物資の輸送や農薬の散布、インフラ設備の点検など様々な分野で社会実装に成功しており、今後より人間に近い環境での調和と共存が求められると考えられる。
古来より人類の生活圏で共生してきたトンボなどの生物の飛翔を模した羽ばたき型の飛行ロボットは、これを実現するための安全性や騒音といった問題を解決した上での社会実装が期待される。
研究成果は、その設計指針となり得る重要な要素となる。
研究論文は、流体力学分野におけるトップジャーナルである「Journal of Fluid Mechanics」オンライン版(現地時間 2023年7月20日)に掲載された。
(詳細は、https://www.teu.ac.jp)