July, 19, 2023, Washington--研究者は、電磁スペクトルの可視光域でフェムト秒パルスを生成する初のファイバレーザを開発した。
超短、高輝度可視光波長パルスを生成するファイバレーザは、様々なバイオメディカルアプリケーションにとって有用である。また、材料加工など、他の領域でも役立つ。
可視フェムト秒パルスは、通常、複雑な、本質的に非効率なセットアップを使って得られる。ファイバレーザは、非常に有望な代替である。耐久性/信頼性、小さなフットプリント、効率、低コスト、高輝度だからであるが、これまでは、そのレーザで直接フェムト秒域の時間幅の可視光パルスの生成は、できなかった。
「われわれの、可視光スペクトルで動作するフェムト秒ファイバレーザのデモンストレーションは、新しいクラスの高信頼、効率的でコンパクトな超高速レーザに道を開く」とカナダのUniversité Laval、研究チームリーダー、Réal Valléeは、コメントしている。
Optics Lettersで研究チームは、その新しいレーザを説明している。これは、ランタノイド添加フッ化物ファイバをベースにしている。635nmで赤い光を放出し、レーザは、168fsの時間幅で圧縮パルスを達成しており、ピークパワーは0.73kW、繰り返しレート137 MHzである。商用ブルーレーザをエネルギー光源、つまりポンプ光源として使うことで、全般的な設計は、頑丈、コンパクト、費用対効果達成に役立っている。
「さらに高いエネルギーとパワーの達成は、近い将来に実現できる。多くのアプリケーションが、この種のレーザの恩恵を受けるとみている」とMarie-Pier Lordは、コメントしている。同氏は、このプロジェクトに関与した博士課程学生。「潜在的なアプリケーションに含まれるのは、生体組織の高精度、高品質アブレーション、2光子励起顕微鏡。フェムト秒レーザパルスにより、材料加工中のコールドアブレーションもできる。熱効果がないので、非常にきれいな切断が可能になる」。
ファイバレーザから可視光を生成
ファイバレーザ、希土類元素をドープした光ファイバは、レーザ発振媒体として機能する。ファイバレーザは、最も簡素で頑丈、信頼度の高い、高輝度レーザの中に入るが、石英ファイバの利用は、近赤外スペクトル域に限定される傾向がある。研究グループは、石英の代わりにフッ化物でできたファイバを使うことでこのレーザ光源のスペクトル域を拡大した。
「われわれは、以前、中赤外ファイバレーザの開発に力を入れていたが、最近は、可視光レーザに関心があった。そのようなレーザのためのコンパクトで効率的な励起光源がなかったことが長い間、その開発を妨げていたが、最近登場したブルースペクトルで動作する半導体ベースのレーザ光源が、効率的な可視光ファイバレーザの開発に重要技術を提供した」(Lord)。
可視光を連続発振するファイバレーザを実証した後、チームは、その進歩を超高速パルス光源に拡大したかった。フッ化物ファイバの製造プロセスの改善により、効率的な可視光ファイバレーザの開発にとって重要な特性を備えたランタノイド添加ファイバが可能になる。
新しいレーザに技術を組み込む
研究チームが開発した新しいパルスファイバレーザは、ランタノイド添加フッ化物ファイバと、市販のブルーダイオード励起レーザを統合している。パルス出力を達成し、維持するためにチームは、ファイバの光偏向の注意深い管理方法を考案しなければならなかった。
「新しい波長のレーザの開発、光コンポーネントの材料特性がが、以前に使われていたものと異なる場合、扱いにくいことがある」と、共著者、Michel Olovierは指摘している。「とは言え、われわれの実験は、われわれのレーザのパフォーマンスが、われわれのシミュレーションと非常によく一致していることを示していた。このことによって確認されたことは、そのシステムが正常に動作し、理解されていること、またシステムの重要パラメタが、適切に特徴付けられ、パルスレーザによく適応している、特にわれわれが使った光ファイバの特性によく適応していることである」。
次に、研究チームは、セットアップを完全にモノリシックすることで技術を改善したいと考えている、つまり個々のファイバピグテール光コンポーネントは、全て相互結合される。これによりセットアップの光学損失減少、効率改善、レーザの信頼度向上、コンパクトで頑丈になる。研究チームは、レーザのパルスエネルギー、パルス幅、平均パワーを改善する様々な方途も研究している。