July, 11, 2023, つくば--産業技術総合研究所(産総研) 物理計測標準研究部門 時間標準研究グループ 川崎瑛生 研究員、小林拓実 主任研究員、西山明子 研究員、田邊健彦 研究グループ付、安田正美 研究グループ長は、イッテルビウム原子の波長431 nmの時計遷移の直接励起を観測し、その周波数の絶対値を世界で初めて測定することに成功した。
イッテルビウム原子には、すでに周波数の絶対値が知られている別の時計遷移があり、光格子時計で刻まれる時間周波数の基準として使われている。今回新たに絶対周波数を測定された時計遷移は、光格子時計に組み込むことで、環境外乱による時間の基準の変動を抑え、その高精度化に貢献することができる。
時計遷移は共鳴する周波数の幅が1 mHz未満と極めて狭く、実験的に観測するためには1 GHz以上の周波数幅の中で探す必要があることから、「砂漠の中から針を探す」と例えられるほど困難なものである。その周波数の絶対値を知ることは、「針」のある位置の「座標」を知ることに相当し、別の人が時計遷移を観測するための強力な手がかりとなる。
今回、新たな時計遷移の周波数の絶対値を測定し公表することで、世界中で光格子時計の開発者が容易にこの時計遷移を観測し、利用できるようになる。その結果、世界中で光格子時計の高精度化の研究が進み、秒の再定義に向けた取り組みの加速が期待される。
この観測の詳細は2023年6月15日(米国東部夏時間)にPhysical Review A誌に掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)