July, 3, 2023, Washington--中国厦門大学の研究者は、水中で動作し、様々な物質を遠隔で区別できる新しいシングルフォトンラマンLiDARシステムを報告している。
新システムは、水中最大12mまでのオイル濃度を検出できることも示している。これは石油流出の検出に使える。
「水中の物質を区別し、海におけるその分布特性を検出することは、海洋モニタリングや科学的研究にとって大きな意味がある」と、厦門大学研究チームリーダー、Mingjia Shangguanは、話している。「例えば、われわれがデモした水中のオイルのリモートセンシングは、水中石油パイプラインのリークモニタリングに役立つ」。
ラマン信号ベースのLiDARアプローチは、以前には水中の物質の検出に使用さていたが、既存システムは、大きくて、大量のパワーを必要とするので実用的ではない。
Applid Opticsで研究チームは、新しいシステムについて説明している。これは、わずか1 μJのパルスエネルギーと22.4㎜レシーバ開口を使用している。LiDARシステム全体は40㎝長、20㎝径で、水中1kmまでで動作する。感度強化のために研究チームは、シングルフォトンディテクションをそのコンパクトな水中ラマンLiDARシステムに組み込んだ。
「水中ラマンLiDARシステムを自律水中船、あるいは遠隔操作船に搭載することで、水中石油パイプラインの漏出をモニタリングすることができる。それは、海洋資源の探査にも使える、あるいはサンゴ礁などの海底堆積物の検出にも適用できる」(Shangguan)。
水中LiDARのシングルフォトン感度
従来のLiDARシステムは、船上、航空機あるいはサテライト、水の上で動作するように設計されており、大規模海洋プロファイリングが達成できるが、その検出深度は限られている。特に荒れた海の状況の場合である。しかし、ラマンLiDARシステムは、海の状況による影響を受けることなく、様々な深さで水中の分析のために利用できる。
ラマンLiDARは、グリーンレーザ光パルスを水に放出することで機能する。光パルスが、オイルのような物質と相互作用する。これが、物質の特定に使える非弾性ラマン信号を励起する。特定の波長でラマン信号の強度を計測することでLiDARは、水中の含有量についての情報を提供できる。
「従来のラマンLiDARシステムは、リモートセンシング検出達成に増加するレーザパワーと望遠鏡の絞りに依存している。これは、大きなシステムサイズ、高エネルギー消費となるので、LiDARシステムを水中船に組み込むことは難しくなる。シングルフォトン検出技術の利用により、検出感度をシングルフォトンレベルまで向上させることでこの研究は可能になった」(Shangguan)。
研究チームは、その新しいLiDARシステムを使って、システムから12m離れた石英セル内の様々なガソリンの濃度を検出することでLiDARシステムを実証した。LiDARシステムと石英セルの両方とも、大きなプールの水中の深さ0.6mに沈められていた。LiDARシステムは、全てのガソリン濃度を検出、区別することができた。これらは、1㎜~15㎜の範囲にある。
研究チームは、現在、検出チャネル数を増やし、水中の様々な物質を区別する能力を強化するためにシングルフォトンLiDARシステムのスペクトル分解能を高めることに取り組んでいる。これにより、システムは水中のバブルタイプを分析し、サンゴ礁やマンガン団塊の検出に使えるようになる。