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PTT、ニューロモルフィックコンピューティングに光

June, 22, 2023, Pittsburgh--ハードウエアとソフトウエアの両方を統合したヒトの脳や神経システムのように機能するコンピュータを開発することは、数10年にわたる課題であった。ピッツバーグ大学のエンジニアは、光「メムリスタ」が、ニューロモルフィックコンピューティングの開発にとって、いかに重要であるかを探求している。

メモリ付の抵抗、つまりメムリスタは、すでにエレクトロニクスでその多様性を実証している。ニューロモルフィックコンピューティングの計算回路素子、高密度データストレージにおけるコンパクトな記憶素子としての応用である。そのユニークな設計は、インメモリコンピューティングへの道を開き、研究者やエンジニアから等しく大きな関心が寄せられた。

新しい論文「集積光メムリスタ」は、この技術の進化に光を当てている。また、それがその全潜在力に達するために、まだなされなければならない作業である。ピッツバーグ大学スワンソン工学部(University of Pittsburgh Swanson School of Engineering)准教授、Nathan Youngbloodをリーダーとして論文は、電子メムリスタの類似物、光デバイスの潜在力を探求している。この新しいクラスのデバイスは、光ドメインにおける広帯域ニューロモルフィックコンピューティング、マシンラーニングハードウエア、人工知能の変革で大きな役割を担いうる。

「研究者は、実に、光メムリスタに魅了されている。広帯域ニューロモルフィックコンピューティング、マシンラーニングハードウエア、人工知能におけるその信じがたい潜在力のためである」とYoungbloodは説明している。「オプティクスとローカル情報処理の信じがたい融合を考えてみる。それは、以前には想像できなかったような全く新しい技術可能性に扉を開くようなものだ」。

レビュー論文は、この新興分野のフォトニクス集積回路の最近の進歩を包括的に展望している。それは、現在、最先端を探求しており、光メムリスタの潜在的なアプリケーションを際立たせている。これは、局所情報処理と超高速、広帯域光通信を統合している。しかし、スケーラビリティが最も差し迫った問題として登場してきた。これは、今後の研究が対処すべき問題である。

「メモリーあるいは光ドメインでニューロモルフィックコンピューティングをスケールアップするのは、途方もなく大きな課題だ。高速、コンパクト、効率的な技術があると、スケーリングは達成が容易になり、大きな前進になる」とYoungbloodは説明している。

「制限の一例、相変化物質を取り上げている。これは現状では光メモリの最高の記憶密度であり、比較的簡素なオンチップ・ニューラルネットワークを実行しようとすると、必要なメモリセル全体を収めるのにラップトップサイズのウエファが必要になる。フォトニクスでは、サイズが問題になる。われわれは、有用なスケールで役に立つコンピューティングを行うには、ストレージ密度、エネルギー効率、プログラミングスピードを改善する方法を見つける必要がある」(Youngblood)。

光を使ってコピューティングを根本的に変える
光メムリスタは、複数のアプリケーションでコンピューティングと情報処理を根本的に変える。光集積回路(PICs)のアクティブトリミングが可能になり、オンチップ光システムが必要なだけ調整、再プログラムされ、継続的に電力を消費することはない。高速データストレージと読出しができるようにし、処理の加速、エネルギー消費の低減を約束し、並列処理を可能にする。

光メムリスタは、人工シナプスや脳からヒントを得た構造にさえ使える。非揮発性ストレージと非線形出力ができる動的メムリスタは、脳のシナプスの長期可塑性を再現し、スパイキング積分発火コンピューティングアーキテクチャに道を開く。

光メムリスタ技術をスケールアップし、改善する研究は、広帯域ニューロモルフィックコンピューティング、マシンラーニングハードウエア、それに人工知能に前例のない可能性を開く。

「われわれは、多くの異なる技術を見てきた。われわれが注目したことは、われわれが理想的な光メムリスタという目標から、まだ遠いところにあることである。コンパクト、効率的、高速であり、光学特性を大幅に変えるものである。われわれは、単一の技術で実際にこれらの基準を満たす材料、デバイスを探している。それが、その分野を先へ進めるためである」(Youngblood)。

「集積光メムリスタ」は、NaturePhotonicsに発表された。
(詳細は、https://news.engineering.pitt.edu/)