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フォトニック結晶レーザの高輝度単一モード連続動作の実現

June, 19, 2023, 京都--京都大学電子工学専攻の野田進 教授、吉田昌宏 同助教、勝野峻平 同博士課程学生、井上卓也 同助教らのグループは、フォトニック結晶レーザ(PCSEL)の連続動作状態での輝度を、CO2レーザ、固体レーザ、ファイバレーザ等の大型レーザに匹敵する値、1GWcm-2sr-1まで高めることに成功した。
ここに、輝度は、単位面積、単位立体角当たりの光出力と定義され、金属等の物体の光による切断・加工(以後「光加工」)を行うためには、1GWcm-2sr-1の輝度を実現する必要があった。今回の成果は、大型、低効率、高コストという欠点をもつ大型レーザを、小型、高効率、低コストという利点をもつPCSELにて一新可能な段階に達したことを示すものと言える。このような高輝度PCSELの実現は、他の様々な多くの分野にもゲームチェンジをもたらすものと期待される。

スマート製造(=デジタル化による自動的かつ効率的なものづくり)の分野においては、デジタル化に適した小型、高効率、低コストな半導体レーザによる光加工の実現が望まれてきた。しかしながら、既存の半導体レーザは、高出力時のビーム品質劣化により、高い輝度が得られないという本質的な欠点を抱えており、大型レーザに匹敵する輝度を実現することが困難だった。研究グループは、高出力・高ビーム品質(=高輝度)動作可能という特長を有する新たな半導体レーザであるPCSELを、1999年に発明して以来、輝度増大に取り組み、極最近、フォトニック結晶内部における光波の結合状態を精密制御することで、直径3mmのPCSELで50~100W級動作、輝度1GWcm-2sr-1の実現が可能であることを理論的に示した。さらに、直径10mmのPCSELにより、一桁高い出力、輝度も可能なことをも示した。

今回、研究グループは、上記の設計指針に基づく光波の結合状態の制御とともに、制御された光波結合状態を、光加工に必須な連続動作(発熱の影響を大きく受ける動作状態)においても維持可能な構造を導入した直径3mmのPCSELを開発した。その結果、連続動作において、50W単一モード・狭ビーム出射角(0.05°)高ビーム品質動作を実現し、大型レーザに匹敵する輝度 (1GWcm-2sr-1)を世界で初めて達成することに成功した。

研究成果は、6月14日(オンライン版、印刷版は6月22日)に英国科学誌Natureに掲載された。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)