June, 16, 2023, Sydney--シドニー大学の研究者をリーダーとする国際チームは、ナノワイヤネットワークが、ヒトの脳のように短期および長期記憶の両方を示すことを実証した。
研究成果はScience Advancesに発表された。Dr Alon Loefflerが主筆。同氏は、日本の協力者とともに、物理学Ph.Dを取得した。
「この研究でわれわれは、より高次の認知機能、通常はヒトの脳に関連している機能が、非生物学的ハードウエアでエミュレートできることを確認した」(Loeffler)。
この研究は、われわれの以前の研究に基づいている。そこでは、ナノテクノロジーを使って、脳からヒントを得た、ニューラルネットワークのような回路とシナプスのようなシグナリングを備えた電気デバイスをどのように構築できるかを示した。
「われわれの現在の研究は、非生物学的ハードウエアシステムで脳のような学習と記憶の再現に道を開き、脳のような知性の根本的な性質が物理的であることを示唆している」。
ナノワイヤネットワークは、典型的には、裸眼に見え、メッシュのように相互に散乱した、プラスチック材料で覆われた微小、高導電性銀ワイヤでできた一種のナノテクノロジーである。そのワイヤは、ヒトの脳の熱とネットワーク化された物理的構造に側面を真似ている。
ナノワイヤネットワークの進歩は、多くの実世界のアプリケーションの先触れとなり得る。例えば、予測できないような環境で、素早い意思決定をするために必要なロボット、センサデバイスを改善する。
「このナノワイヤネットワークは、合成ニューラルネットワークのようなものである。ナノワイヤが、ニューロンのように機能するからである。また、それらが相互接続する場所は、シナプスに類似している」と物理学部、Zdenka Kuncic教授は、コメントしている。
「ある種のマシンラーニングタスクを実行する代わりに、この研究では、Dr. Loefflerは、実際に、それをさらに進めて、ナノワイヤネットワークが、ある種の認知機能を示すことを実証しようとした」。
そのナノワイヤネットワークの機能をテストするために研究チームは、それに対して、人間の心理学的実験で使われる類似のNバック(N-Back)課題テストを行った。
人では、Nバック課題は、次々と示される一連のネコの画像から特別なネコの画像を思い出す必要がある。Nバックのスコア7は、人々の平均であり、その人が7ステップ前に現れた同じ画像を認識できることを示している。
ナノワイヤネットワークに適用すると、研究者は、それが7ステップ前の電気回路の望ましい終点を「思い出す」ことができることを確認した、つまりNバックテストでスコア7を意味する。
「われわれがここで行ったことは、経路を変えるように終端電極の電圧を操作すること、ネットワークに勝手にさせたのではない。われわれは、それらが行くべきところへ行くように経路を強制した」とDr Loeffierは、説明している。
「それを実行すると、そのメモリは遙かに高い正確さを有しており、実際に時間経過と共に低下することはなかった、われわれは、強制的に行って欲しいところへ行くように:経路を強化する方法を見出していたことを示唆している。
「神経科学者の考えでは、これは脳の機能の仕方である、あるシナプス接続が強くなると他が弱くなる、それこそ、われわれがある物事を選択的に思い出し、どのように学習するかなどの仕方と考えられる」
研究者によると、そのナノワイヤネットワークは、絶えず強化されており、情報がメモリに固定されて、もはや強化が必要でない点まで到達する。
「それは、われわれの脳における長期メモリと短期メモリの違いのようなものである」(Kunicic)。
「長期期に何かを覚えていたいなら、われわれは、脳をトレーニングしてそれが固定するようにする必要がある、でなければ時間と共に次第に消えていく。
「われわれの研究は、ナノワイヤネットワークが、確率より遙かに高く、7項目までをメモリに蓄積できる事を示した。強化トレーニングは不要であるが、強化トレーニングにより、ほぼ完璧な正確さになる」