June, 15, 2023, つくば--物質・材料研究機構 (NIMS) は、接着と剥離を何度でも繰り返すことができ、かつ、必要な時には基材と接着剤を元の状態にリセットできる、再生可能な接着剤を開発した。
環境への配慮と経済成長の両立への意識の高まりの中、複数部材からなる成形加工品を原材料に分離・回収する技術が求められている。その中で、使用時には十分な接着力を発揮し、役目が終わると容易に剥離することができる新たな接着方法が注目されている。そもそも接着と剥離は、矛盾する要素が含まれていることから、強力な接着力と容易な剥離を両立することは困難だった。また、解体できたとしても、基材に接着剤が残ったり、基材が壊れたりすることもあり、マテリアル循環を妨げる要因になっていた。
今回、研究チームは、波長の異なる紫外線を照射することで架橋・脱架橋反応を可逆的に引き起こすカフェ酸に注目した。カフェ酸を組み込んだ高分子を基材に塗布したのちに、波長365 nmの紫外線を当てると、架橋反応によって不溶化した塗膜となる。この塗膜は室温で保存している状態では接着性を示さないが、加熱することで接着と剥離を何度でも繰り返すことができる。さらに、使用期間が終わった際には、波長254 nmの紫外線を照射することで、架橋した部分が開裂し、塗布前と同じ状態にリセットされることで、接着剤と基板の両方を回収、再利用できるようになる。また、カフェ酸の化学構造に含まれるカテコール基は、付着生物であるムラサキイガイが分泌する接着成分にも多く含まれており、フッ素樹脂や水中での接着など、一般的な接着剤が苦手とする基材や使用環境においても、強力な接着力とリサイクル性を発揮した。
今後は、マテリアル循環を指向したものづくりに貢献する接着剤として、電子機器や輸送機器、医療機器、インフラ補修など様々な用途に展開していく。
研究成果は、Advanced Functional Materials誌に2023年6月13日 (日本時間) に掲載予定。
(詳細は、https://www.nims.go.jp)