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有機ELより低コストな発光電気化学セルの動作メカニズムを解明

June, 13, 2023, つくば--発光電気化学セル(LEC)は有機性発光素子の一つ。有機発光ダイオード(OLED)と比べて構造が簡単で柔軟性にも富むことから、印刷技術を活用するなど低コストでの製造が可能。また、OLEDより低い電圧で駆動できることなども利点で、次世代の省エネ発光素子として注目されている。しかし、その動作メカニズムが微視的なレベルでは未解明のままで、このことが実用化に向けた研究の障壁となっていた。

研究では、代表的な有機発光材料のスーパーイエローを用いたLECについて調べた。電子スピン共鳴(ESR)法を用い、LECが動作している状態で電荷のスピン状態を観察し、LECに加える電圧が高くなるにつれて発光もESRも増えることが分かった。さらに、観測した信号の理論解析から、ESRの増加の起源は、スーパーイエローに電気化学的にドープされた正孔と電子であることを突き止めた。また、ドーピングの進行が輝度の上昇と相関していることから、電気化学的にドープされた電荷が発光層上に分布していることが動作メカニズムとして示唆された。

研究チームの開発した手法により、発光電気化学セルの動作機構について、これまでにない分子レベルの情報を提供することが可能となった。その情報を基にすることで、低コストでより環境負荷の少ない発光素子の製品開発が効率良く進むことが期待される。

研究代表者
筑波大学数理物質系/エネルギー物質科学研究センター
丸本 一弘教授

掲載論文
Investigating the operation mechanism of light-emitting electrochemical cells through operando observations of spin states
(スピン状態のオペランド観察による発光型電気化学セルの動作機構の解明)
【掲載誌】 Communications Materials 【DOI】 10.1038/s43246-023-00366-3
(詳細は、https://www.tsukuba.ac.jp/)