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ヒトの脳をベースにしたスマートチップ

June, 13, 2023, Eindhoven--現在のコンピュータシステムは、正確な計算は、非常に得意である。しかし、われわれがますます多くのAIーベースアプリケーションを使用するようになると、同じ精度でリアルタイムにデータを処理できる、より効率的なシステムも必要になる。
TU/e研究者、Eveline van Doremaeleは、人間の脳をモデルにした新世代のコンピュータに取り組んでいる。さらに、同氏は、ニューロモルフィックコンピューティングで同氏が開発した独自のチップに有機材料を使用した。すなわち、それはわれわれの身体との相互作用が可能であるということである。

自動運転車、顔認識、言語認識、全て人工知能(AI)ベースのアプリケーション、これらを可能にするためにコンピュータシステムは、ますます動的になる環境に適応し、構造化されていない不完全なデータを取り扱うことができなければならない。現在の人工ニューラルネットワークは、機能は優れているものの、大きな欠点がある。例えば、エネルギー消費量が多く、複雑な計算の実行には相対的に長い時間がかかる。

これは、Eveline van Doremaeleが、最後の数年を費やして新世代のコンピュータシステムに取組み、身体の中の様々なアプリケーションに使えるスマートチップを開発した理由である。

脳を模倣
「われわれ自身、複雑なタスクを行うための完全なシステムをもっている。われわれの脳は、不確かなことを扱うのが得意であり、変化する環境で非常に効率的に機能する。これは、主に、われわれの脳が処理と計算を同時に行い、以前の経験をベースにした学習能力のためである。それこそが、AIアプリケーションにわれわれが必要としていることだ」。

コンピュータシステムでわれわれの脳の構造と機能を真似ているニューロモルフィックコンピュータが近年、増加しているのは不思議ではない。「エネルギー効率がよく、高速でダイナミックであり、われわれの脳は、完全なコンピュータシステムが、いかに機能すべきかを証明している。したがって、われわれのグループや他の研究者に膨大なインスピレーション源としてとして役立つ。人々と機械の間で自己学習する相互作用を重視するデバイスを開発することで、われわれは、それを次のレベルに押し上げる」(van Doremaele)。

「例には、身体に取り付けることができるスマート義肢が含まれる。人工ニューロンによりこれにペンをつかむように教えることができる。人工ニューロンは、同時に様々なセンサを使い、数100万の正常細胞の間を循環するガン細胞を検出する。また、老化する心臓に適応するペースメーカーが含まれる。われわれがその技術を稼働させると、アプリケーションは無限である」。

自己学習システム
そのようなチップを造るために、van Doremaeleは、プログラミングに適し、われわれの身体に受けがいい適切な材料を探し始めた。van Doremaeleの研究は、導電性有機ポリマ、電流を通過させる長い分子が、この点で極めて有効であることを示している。「そのシステムに自己学習ができるようにするためには、デバイスの抵抗が可変であることが重要である。これは、われわの脳でも起こる。頻繁に何かを学習すると、神経細胞間の接続が、より強くなる。イオンを使うとわれわれは実際に抵抗を変えられるが、われわれは、その接続を永続的にもしたい」と同氏は説明している。

弱くなる接続
「これまで、接続が時間と共に弱くなる材料の使用は、われわれの分野では一般的であった。義肢の場合、このことの意味は、1ヶ月後に、例えば、もはやペンの取り上げ方が分からなくなるということだ」とPh.D候補は説明している。

「P-3O、われわれがテストした両極性材料はユニークである。それは抵抗を変え、設定された接続を維持することができる。体内の水の多い環境など液体電解質、固体電解質、イオンゲルの両方で、それは機能する。細胞を相互に結びつけることでわれわれは、特定の特性をもつ複合回路を作ることができる。微小な筋肉運動の弱い信号を計測する際、あるいは心臓の鼓動など多くのノイズに囲まれた信号を計測する際、それは役に立つ。

汗のサンプルを計測
複雑な計測を行うには、さらなる研究が必要である。Van Doremaeleは、すでにニューロモルフィックコンピューティングを利用して、バイオセンサを開発している。これは、被験者の汗サンプルを分析し遺伝病嚢胞性線維症の存在を知ることができる。「様々なセンサを使ってチップは、汗のカリウムや塩素含量を計測できる。そのシステムに全ての汗サンプルの予測をさせた。予測が間違っていれば、ボタンを押す、システムは自己修正する。最終的に、そのバイオセンサは、正しい答だけを出す。したがって、ヒトの脳のニューロンのように、独特の方法で、それは学習する。これによりわれわれは、われわれが詳説できる根拠が得られる」(Van Doremaele)。

極めてユニーク
Van Doremaeleは、同氏の研究に多くの関心があることに気づいた。「AIは、実質的に至る所にあり、それはますます偏在的になるばかりである。しかし、エネルギー問題も増加している、データセンタが、膨大なエネルギーを使うからである。つまり、われわれが代替コンピュータシステムを見つけることが重要である。自己学習バイオメディカルアプリケーションのために有機材料重視は、極めてユニークである」と同氏はコメントしている。