June, 6, 2023, Lausanne--EPFLの研究チームは、新しいマシンラーニングアルゴリズムを開発した。これは、脳から記録されたデータの隠された構造を明らかにし、マウスが見るものなど、複雑な情報を予測することができる。
脳信号だけに基づいてヒトが見ることを再構成できるか。答はNO、まだできない。しかし、EPFLの研究者は、素晴らしい精度で脳の動力学を捉える人工ニューラルネットワークモデルを構築するための新しいアルゴリズムを導入することで、その方向へ一歩前進した。
数学に根ざした新しいマシンラーニングアルゴリズムは、CEBRA (pronounced zebra)と言い、神経コードの隠された構造を学習する。
生の神経データからCEBRAがどんな情報を学習するかは、デコーディングによるトレーニング後にテストすることができる、それはブレイン・マシーン・インタフェース(BMIs)法であり、チームは、マウスがムービーを見ている間に何を見ているかをそのモデルからデコードできることを示した。とは言え、CEBRAは視覚野ニューロン、あるいは脳データに限定されるわけではない。この研究は、脊椎動物の腕の動きを予測するために使えること、ラットがアリーナ中を自由に走り回っているときにラットの位置を再構成するためにも使えることを示している。研究成果は、Natureに発表された。
「この研究は、ハイパフォーマンスBMIsを可能にするために神経科学で必要とされる理論的に裏付けられたアルゴリズへの一歩前進である」とMackenzie Mathisは、言う。同氏は、EPFLの統合的神経科学(Integrative Neuroscience)Bertarelli Chairおよび 研究のPI。
マウスの視覚系の潜在(隠された)構造の学習のために、脳信号とムービーの特徴をマッピングする最初のトレーニング期間後に、CEBRAは、見えないフレームを脳信号だけから直接予測できる。
ビデオデコードのために使われるデータは、シアトルのAllen Instituteを通じてオープンアクセスとなっていた。脳信号は、マウス脳の視覚野に挿入された電極プローブにより脳活動を計測することで直接、あるいは遺伝子操作されたマウス、活性化ニューロンがグリーンに光るように遺伝子改変されたマウスで構成される光学プローブのいずれかで得られる。トレーニング期間中、CEBRAは、脳活動を特殊フレームにマッピングできるようになる。CEBRAは、視覚野では1%以下のニューロンで良好に機能するので、それを考慮すると、マウスでは、この脳領域は、約50万のニューロンで構成されている。
「具体的には、CEBRAは、対象学習に基づいている。高次元データが、潜在空間と言われる低次元空間でどのように整列、埋め込まれるかを学習する技術。同じデータポイントが、近接し、違いの大きなデータポイントが離れるようにする」(Mathis)。「この埋込は、データの隠された関係や構造の推理に使える。研究者は、それにより、ニューラルデータと行動ラベルをいっしょに考えることができる。これには、計測された運動、抽象的ラベル“報酬”、あるいは画像の色、模様など感覚的特徴が含まれる」。
「CEBRAは、他のアルゴリズムと比較すると、合成データの再構築で秀でている。この点は、アルゴリズムの比較にとって極めて重要である」と論文の共筆頭著者、Steffen Schneiderは言う。「その力は、ムービー機能や脳データなどモダリティにわたるデータを統合する機能にある、また、それは、微妙な差の制限に役立つ、例えば、収集法に依存するデータの変化である」。
「CEBRAの目標は複雑なシステムの構造を明らかにすること。さらに、われわれの宇宙で脳が最も複雑なシステムであるなら、CEBRAにとっては、それは究極的なテストスペースである。われわれは、脳がどのように情報を処理するかが分かり、また動物、種全体のデータを統合することで神経科学における新しい原理を発見するためのプラットフォームになり得るかが分かる」(Mathis)。「このアルゴリズムは、動物の行動や遺伝子発現データなど、時間や関節情報を含む多くのデータセットに適用できるため、神経科学研究に限定されない。 したがって、潜在的な臨床応用は興味深い」。