October, 27, 2014, Tokyo--NICTは、レイセオンBBNテクノロジーズ社(米国)及びルイジアナ州立大学(米国)と共同で、現在実用化が進められている2地点間の量子暗号における新理論を確立し、量子鍵配送の1パルスあたりの鍵生成レートの原理的な限界を世界で初めて解明した。
量子暗号は、コンピュータによる解読が絶対不可能とされる究極的な暗号通信として、実用化が期待されている新しい技術。今回の成果は、鍵生成レートが量子鍵配送プロトコルの改良により、現在の更に10倍程度まで向上できる可能性を示すとともに、その将来的な限界を明らかにした。これらは、これからの研究開発の指針を与えるものであり、このことにより、今後の研究開発の加速が大きく期待される。
今回、量子鍵配送について、量子情報理論に基づく新しい理論を確立し、この鍵生成レートの伝送損失に対する指数的な減衰は、個々の量子鍵配送プロトコルによらない普遍的な原理であることを解明した。また、その原理的限界は、現在実現している量子鍵配送プロトコルにおける1パルスあたりの鍵生成レートの10倍程度であることも明らかにした。
このことは、現在の鍵生成レートが、量子鍵配送プロトコルの更なる改善により、10倍程度まで向上できる可能性を示すとともに、どのようなプロトコルでも超えられない限界も同時に明らかにしたもので、今後、新しい量子鍵配送プロトコルの開発を進める上で重要な指針を与える成果。
今後NICTは、「この成果で明らかとなった鍵生成レートの理論限界に近づく、より優れた量子暗号プロトコルの開発に取り組む。同時に、1秒当たりの光子パルスの生成数の向上に向けて、デバイス開発や波長多重化なども進めていく」とコメントしている。
鍵生成速度及び伝送距離の限界は、従来の2地点間の量子暗号を超える新しい技術革新により、抜本的に超えることができる。それには、送受信者の間に量子的な中継器を置く量子中継技術や、量子暗号の物理的安全性の条件を少し緩和することで、鍵生成レートを大きく向上させる新しい物理レイヤ暗号技術などの実現が不可欠。これらの技術は、まだ理論的・実験的に発展途上であり、実現には長期間の研究開発を必要とするが、NICTは「こうした基礎的な研究にも積極的に取り組んでいく」としている。
(詳細は、www.nict.go.jp)