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極紫外をフォーカスする初のメタレンズ

May, 19, 2023, Cambridge--新しい穴あきメタレンズは、ナノオプティクス利用してEUVビームを集束させることができ、顕微鏡、センシング、ホログラフィ、基礎物理学研究に新たな扉を開くことができる。その進歩は、Scienceに発表された。

ハーバード大学(Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences (SEAS)), Federico Capasso’s labは、2011年に屈折メタサーフェス、サブ波長間隔のナノ構造アレイの画期的なコンセプトを発表した。2016年には、ナノピラーでできたハイパフォーマンスフラットレンズ利用をScieceに報告した。これは、リソグラフィ技術で製造されており、集光の新たな戦略を明らかにした。この研究は、モールディングで作製され、厚く、バルキーな従来の光学デバイスには、大きな飛躍である。

最初のメタレンズ実証から、研究チームは、その技術を広範囲に採用し、メタレンズを設計した。可視光、赤外光に対してますます複雑な制御を行う設計であった。しかし、EUV範囲で光を制御するためにそのようなメタレンズを利用することはできない。EUV波長は、50nm範囲の極めて小さな波長であり、400~700nmの可視光よりも著しく小さい。そのような小さな波長では、EUVは全ての材料に吸収されるので、その光は、透過光学系では屈折も制御もできない。

Capassoグルプノ最新のブレイクスルーは、考え方を根本から変える回避策である、つまり、EUVを真空誘導するナノサイズホールを利用するメタレンズの作製である。「この研究は、特殊な領域(EUV)のオプティクスを変革する、そこでは、これまでは、ハイパフォーマンス、量産アプリケーション向けのレンズ、つまり実行可能なオプティクスは存在しなかった」(Capasso)。
この新しい研究は、グラーツ工科大学(Graz University of Technology)のMartin Schultze ラボとの協働だった。

そのアイデアは、元は、Capassoグループのポスドクフェロー、Marcus Ossianderの考えである。同氏のバックグラウンドは、アト秒物理学。「アト秒スケールでレーザパルスを作ることができる唯一の方法は、紫外光の極短波長を使うことだ。EUVを制御できるメタレンズを作ることは大きな夢だった」(Ossiander)。

一般的なメタレンズは、ナノピラー作製に依存している。それは、可視光を屈折させ、所望の方法で集光する。しかし、EUV光は、到達する全ての材料でそれは吸収される。Ossianderは、戦略が機能しないことを認識した。信じられないほど高速に振動する光と材料が相互作用するする方法を考えていて、創造的な新しい考えが浮かんだ。

「透過ピラーを作るために、空気から反転してはどうか」。空気そのものよりも低い屈折率の材料表面に孔をけ、孔の内部の真空を使うことでEUVをガイドし、集光できると仮定した。コンピュータシミュレーションが、それが実際に機能することを示唆したとき、同氏は、プロトタイプを造るために、ナノファブリケーションの専門家、ポスドク研究者Maryna Leonidivna Meretskaとチームを組んだ。

「製造は、一般に、多くの忍耐を要する。機能するサンプルを実現するために何度も試行した。その度に、われわれはそのプロセスについて新しいことを学習した、またそれによって前進を続けた」

「この研究は、今日、ナノテクノロジーで可能なことの限界を実際に押し広げる。われわれは、EUV波長と相互作用できるだけの小さな特徴を備えたこのメタレンズを作る非の打ち所のない製造法を必要としている。つまり、その特徴は、その波長よりも小さくなければならない。それにより、メタレンズの特徴を、以前の成果と比べて、10倍縮小したのである。それは、実に、非常に大きな飛躍であった」(Capasso)。

プロトタイプが完成すると、Ossianderは、世界に数少ない研究所の一つ、EUVを作るオーストリアのグラーツ工科大学(Graz University of Technology)の実験物理学研究所(Institute of Experimental Physics)に飛んだ。そこで、アト秒物理学者、Martin Schultzeにリードされて、メタレンズプロトタイプにEUV放射を通した。何度も実験した後、チームは、長い間夢見ていたことを実際に見た。光の集光を示す小さなスポットが、特殊なカメラで検出されたのである。

「このプロジェクトの全要素がオーケストラのように機能した。サンプル製造と計測プロセスの両方とも、信じられないほど挑戦的であり、全てが設計通りに機能することが分かって、満足だった」(Meretska)。

そのブレイクスルーは、アト秒物理学には意味がある。メタレンズを利用して、ナノ粒子スケールで光と物質との相互作用の理解が進むからである。Capassoによると、半導体産業もEUVメタレンズ技術から恩恵を受ける、より小さなトランジスタやプロセッサの製造を可能するからである。とは言え、多くの考え及ばない未来のアプリケーションがありそうだ、と同氏は話している。

Ossianderは、「現在、EUVメタレンズからの恩恵を受ける全領域については知らない。この種の技術が、直ぐに利用可能になるかどうかは、だれにも分からないからである」とコメントしている。
(詳細は、https://seas.harvard.edu)