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植物のためのマイクロニードルベース薬剤デリバリ技術

May, 9, 2023, Cambridge--SMARTで開発されたデバイスは、一定量の農薬を特定植物組織に届くようにデリバリできる。いずれ、作物の品質や疾病管理改善に使えるようになる。

微量栄養素、殺虫剤、抗生物質などの農薬を作物に効率的に導入するデリバリシステムの開発は、リソースの無駄を最小化しながら、高生産性、高品質の作物獲得に役立ち、重要になる。

シンガポールとUSの研究者は、史上初の植物向け、マイクロニードル(極微針)薬剤送達技術を開発した。その方法は、研究目的で、一定量の農薬を特定の植物組織に送達するために使うことができる。フィールドで用い、いずれ精密農業で使われ、作物品質や疾病管理を改善することになる。

研究は、MITのシンガポールエンタプライズ、MITとTemasek Life Sciences Laboratory (TLL)、Singapore-MIT Alliance for Research and Technology (SMART)で、Disruptive and Sustainable Technologies for Agricultural Precision (DiSTAP)学際的研究グループの研究者が主導している。

植物における現在の標準的農薬適用、波面散布などは、非効率である。的外れな適用、雨で直ぐに流れ、有効成分の急速な分解などのためである。このような実行は、著しく有害な環境副作用の原因となる。水や土壌の汚染、生物多様性損失、劣化生態系など。また、呼吸器の問題、化学物質への暴露、食物汚染など公衆衛生上の懸念がある。

新しいしシルクベース・マイクロニードル技術は、既知のペイロード量を直接植物の深部組織に向けて導入することで、こうした制約を回避する。これは、植物成長の高い有効性につながり、疾病管理に役立つ。同技術は、植物に長期の損傷を与えることなく化合物を送達するので侵襲性が少ない。また、環境的に持続可能である。さらに、リソースの浪費を最小化し、環境の農薬汚染による有害な副作用を軽減する。加えて、精密農業の実行を促進し、植物を研究し、作物の特徴を設計するための新たなツールを提供するので、食糧安全保障確保にも役立つ。

Advanced Materialsに発表された論文“Drug Delivery in Plants Using Silk Microneedles,”(シルクマイクロニードルを利用する植物における薬剤送達)で、研究チームは、幅広い範囲の植物に少量の化合物を送達するのに使った初のポリママイクロニードル(極微針)、および生体材料注入に対する植物の反応を研究している。遺伝子発現解析によりチームは、マイクロニードル注射に続く薬剤デリバリへの反応を綿密に調べることができた。最小限のキズとカルス形成が観察され、植物への注入によるキズが最小であったことを示している。この研究の概念実証は、植物生物学や農業で植物マイクロニードル適用に扉を開き、植物の生理機能を調整し、効率的、効果的なペイロードデリバリによる代謝研究の新たな手段を可能にする。

研究は、選択したモデル植物にシロイヌナズナで全身輸送システムをターゲットにするマイクロニードルの設計を最適化した。農業で広く使用されている植物成長調整剤、ジベレリン酸(GA3)をデリバリに選択した。マイクロニードルによるGA3のデリバリは、従来法(波面散布など)と比べて成長促進により効果的であることを確認した。次に遺伝学的手法を利用してその効果を確認し、その技術が野菜、穀類、大豆や米を含む様々な植物種に適用可能であることを実証した。

「その技術は、無駄になるような現在の農薬デリバリ法に比べてリソースの浪費を減らす。適用では、マイクロニードルは、組織障壁を突破し、植物の内部に直接化合物をリリースするので、農薬の損失を回避する。同技術により、使用される農薬量を精密制御が可能になり、ハイテク精密農業や作物の成長が可能になり、収率が最適化される」と研究チームは、説明している。

「その種のもので初の技術は、農業産業にとって革命的である。それは、リソースの無駄、環境汚染も最小化する。将来的には、可能性として自動化されたマイクロニードル応用により、精密な農薬デリバリや病気の管理に、ハイテク屋内外の農場で使われる可能性がある」と論文の筆頭著者、MITポスドク、Yunteng Caoは、コメントしている。

「この研究は、生体材料に対する植物の反応を調べるために遺伝的ツールを利用することの重要性も強調している。遺伝的レベルでこれらの反応を分析することで、これらの反応を包括的に理解でき、今後の農業食品産業全体で利用できる生体材料の開発へのガイドとして役立てられる」と共同筆頭著者、Sally Kohはコメントしている。