April, 28, 2023, Lausanne--スイス連邦工科大学(EPFL)研究者は、渦のような構造に配列された一握りのスピンを、これまでに達成された最高速度で、可視化し、制御する新しい技術を開発した。そのブレイクスルーは、“spintronics”を前進させる。スピントロニクスは、新しいタイプのコンピュータメモリ、論理ゲート、高精度センサを含む技術。
「コンピュータ、データストレージおよびセンシングにおける技術進歩は全て、物質のナノスケール磁気特性を制御する新技術を必要とする」とEPFLの基礎科学部、Fabrizio Carbone教授は、言う。これらの特性の一つが“spin”である。これは、個々の原子の磁気配向。
スピンは、近年、多くの関心を引きつけ、スピン・エレクトロニクス、つまり“spintronics”が誕生した。スピンの基礎研究とは別に、スピントロニクスのもっと実用的な狙いは、従来のエレクトロニクスのように、電子の電荷を活用するだけでなく、そのスピンを利用する。それにより、データストレージや転送の効率を改善する追加の自由度が得られる。
とは言え、これは先ず、われわれが少数のスピンを制御できる必要がある。「少数のスピンの可視化、決定論的制御は、超高速時間スケールではまだ達成されていない」とDr Phoebe Tengdinは、言う。同氏は、Carboneラボのポスドク。アプリケーションに飛躍するには、スピントロニクスで、この制御が起こる必要がある極めてタイトなタイムフレームを同氏は指摘している。
Tengdinは、PhD学生Benoit TrucおよびポスドクDr Alexey Sapozhnikとともに、新しい技術を開発した。これは、渦のような構造、スキルミオンという一種のスピン“nano-whirlpool”で配列された一握りのスピンの回転を可視化し、制御できる。
これをするために、研究者は、フェムト秒タイムフレームのレーザパルス列を使った。レーザパルスを適切に離して配列することでチームは、その分野では化学成分Cu2OSeO3で知られているセレン-銅鉱物におけるスピンの回転を制御することができた。その鉱物は、スピントロニクスでは極めて一般的であり、スピンの研究には理想的なテストベッドを提供している。
レーザパルスでスピンを制御した時、連続駆動パルス間の遅延を変え、レーザ偏光を調整するだけで、研究チームは、その方向を自由に変えることさえできることを確認した。
とは言え、研究は、そこで止まらなかった。ナノスケール次元を“見る”ことができる透過型電子顕微鏡を使うことで、チームは、実際にスピンの変化もイメージングできた。そのブレイクスルーは、スピントロニクスの基本的側面に非常に大きな意味をもっている。
この研究は、その分野に超高速で磁気構造を制御する新しいプロトコルを提供している、また次世代情報ストレージデバイスにおけるスピンスイッチにエキサイティングな新たな機会を開く。
「われわれの実験は、中程度の強度の光ビームを使って一握りのスピンを高速で制御、イメージングできることを実証している。そのような効果は、スピンで動作する低電力超高速デバイスで活用できる。新しいタイプのメモリーや論理ゲートが可能性のある候補であり、高精度センサも同様である」とTengdinはコメントしている。