April, 24, 2023, Cardiff--英Cardiff Universityの研究者は、生物で金属ナノ粒子の毒性を評価する新しいイメージング法を考案した(Appl. Phys. Lett., doi: 10.1063/5.0140651)。
そのような微小粒子は、工業製造プラントから出て周囲の環境に浸出するが、研究者は現在、地元の生息地や野生生物に対するその影響を知るツールを持っていない。
研究は、一般的なダンゴムシに集中している。これは、金属汚染物質を含む有機物を摂取して処理することができる。これらの小さくてユビキタスな生き物は、特殊な消化器官、つまり肝脾臓をもっている。これにより、金属粒子を蓄積し、最終的に吐き出すことができるが、それだけではなく金属堆積物を食物連鎖の他の動物に移送するルートも提供している。
金ナノ粒子の検出
Cardiffチームが考案した光技術は、肝脾臓内で個々の金ナノ粒子の位置と分布を検出する。「通常は山シラミの食べ物には存在しない金ナノ粒子を利用することでわれわれは、複雑な生体系内でナノ粒子の行路を調べることができる」と研究チームのメンバー、Wolfgang Langbeinは、コメントしている。
しかし従来の光学方法では、生物組織の光散乱が、そのような大きなマルチ細胞構造内のナノスケール物体を見えなくする。X線蛍光顕微鏡は、生体内の金属の化学組成を計測するベストの方法であるが、そのためにはシンクロトロンに行く必要があり、生きた組織の分析はできない。
バックグラウンドフリーの4波混合(FWM)顕微鏡では、光パルスを使って金ナノ粒子の表面状態を励起する。この局所的励起で生成される超高速プロセスが、粒子の光散乱挙動を変え、独自のシグネチャを作り出す。それは、ポンプとプローブパルス間の時間遅延を変えることで、長寿命信号から区別できる。
比較的簡単な技術
研究チームは、金ナノ粒子を混ぜた有機物をワラジムシに与えることでチームの構想をテストした。肝脾臓のサンプルは、4日後、FWM技術でイメージングされ、多細胞臓器内の単一金ナノ粒子位置を明確に明らかにした。時間遅延は、肝脾臓内に蓄積することが分かっている銅と鉄の構造が原因であるので、より長いポンププローブの後に他の信号が検出された。
この特別な研究は、解剖されたサンプルを利用したが、原理的にはFWM顕微鏡は、生きた細胞の研究にも使える。その3Dイメージング機能と組み合わせてチームは、この比較的簡素な技術が、シンクロトロンベース分析の貴重な補完となると考えている。「これら生物内の金ナノ粒子の追跡は、さらなる研究への最初のステップである。例えば、金が特殊な細胞に収集されているか、それが高用量で代謝を阻害するかどうかを判断するためのさらなる研究である」とLangbeinはコメントしている。