April, 4, 2023, 東京--日本電信電話株式会社(NTT)は、2030年代の無線需要を支えるテラビット級無線伝送の実現をめざし、32GHzにわたる超広帯域幅を利用した、OAM(Orbital Angular Momentum:軌道角運動量)多重伝送を実現し、毎秒1.44テラビットの大容量無線伝送に世界で初めて成功した。
この成果は、135GHzから170GHzのサブテラヘルツ帯を用いて実現され、毎秒1テラビットを超える膨大な情報を無線アクセスで利用可能とする革新的無線通信技術として、NTTがグローバルパートナーと実現をめざすIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想における光を中心とした大容量通信ネットワーク・情報処理基盤を6Gを含む無線ネットワークに拡張するもので、この技術を発展させることで、VR/AR(仮想現実/拡張現実)や高精細映像伝送、コネクティッドカー、遠隔医療を含む将来の多様なサービスの創出および普及に貢献することが期待される。
技術の詳細は2023年5月28日から開催される国際会議IEEE ICC (International Conference on Communications)にて発表を予定している。
技術のポイント
・Butler回路により8つのOAM波を同時に伝送するためには、電波の位相を極めて高い精度で制御する必要がある。電波の位相の進み方は周波数によって異なるため、アナログ回路によって広帯域にわたり位相を均一に制御することは非常に困難。この研究では、自由空間とは異なる導波路内の特有の電波伝搬を解析し、理論的に広帯域にわたって位相の進み方を均一に揃えることが可能な位相回路を考案した。
・性能劣化要因である回路の平面交差をなくし、すべての経路が電気的に等しい長さになるように、位相回路を含む多層立体経路を設計することにより、35GHz幅以上にわって各OAMモードに必要な位相を与えることができるButler回路の試作に成功した。
・Butler回路は中空導波回路として設計されており、一般的な誘電体基盤回路などと比較して誘電損失や電波の漏洩を防ぐことができるため、高周波回路であるにもかかわらず低損失を実現したことも特徴のひとつ。
(詳細は、https://group.ntt)