April, 4, 2023, Hong Kong--3Dプリンティングを利用して作製された異なるメタサーフェスの相対的回転がTHz放射を2D面あるいは3D空間の任意の点にどのように焦点を結ぶかを香港の研究者が示した。
第6世代ワイヤレス通信(6G)は、世界中で現在導入が進んでいる5Gシステムよりも遙かに高速なデータ転送を約束する。しかし、その放射は、それが空気中を伝播する際に極めて簡単に減衰するので、意図した受信者に正確にデータを向けるには新技術が必要になる。
香港の研究者は、薄い、注意深く作製されたメタデバイスを使い、これの達成法を示した(Sci. Adv., doi: 10.1126/sciadv.adf8478).。研究チームによると、これらのデバイスはビームを2Dおよび3Dで焦点を調整し、6G通信ネットワークでエネルギー効率のよい、比較的安価な通信を確保する、同時にプライバシーも保護する。
テラヘルツビームの操作
5Gから6Gへの移行は、2030年代早期に起こる見込であるが、その場合、データレートは二桁跳ね上がる。5Gミリ波はせいぜい10Gbps程度のスピードだが、テラヘルツ放射(30~3000GHz)は、伝送レートを1Tbpsまで押し上げる。
この潜在力をフル活用し、ネットワークの信号が特定の受信者に確実に届くようにするために研究者とエンジニアは、今日、THzビームを誘導する大きな誘電体コンポーネントの置き換える方法の研究を始めた。特定の材料、液晶、あるいは1原子厚のグラフェンとして知られるカーボンが、ステアリングとなるものもあるが、一方向のみ、あるいは限られた領域のみである。PINダイオードなどのアクティブコンポーネントの方が機能は上であるが、そのコストと複雑性のためにワイヤレスシステムへの大規模導入が妨げられ可能性がある。
3Dプリントされたメタサーフェス
最新の研究で、香港城市大学(City University of Hong Kong)のTsai Din-Ping, Chan Chi-houチームは、30㎜径、厚さ1㎜をわずかに上回るメタサーフェスの組合せを使いTHz波の方向を指示する方法を示している。そのメタサーフェスは、11000程度の様々な高さの立方体アンテナで構成されており、その配列が、通過するTHz波に特定の相変化を加える。
そのアイデアは、2、あるいはそれ以上のメタサーフェスを相互にスタックすることで、その波の方向を変えられるというものである。メタサーフェスが定位置の場合、波はデバイスの向こうの特定の点に集中したままとなる。しかし、そのサーフェスを他に対して回転させることでその波の焦点を変えることができる。
Tsai, Chanとチームは、3Dプリンタを使って、屈折率が正確に分かっている高温レジンのピースを成形することで2つのメタデバイスを作製した。一つは、エアリービーム(非回折)を2D面に焦点を結ぶ2つのメタサーフェスでできている。他方は、3つのメタサーフェスでできており、これらは異なる距離で面に焦点を結ぶことできるものであった。両方の場合、鉛酸チタンセラミックの圧電効果を利用することで、素早く、正確にメタサーフェスを回転させることができた。
同技術をそのペースで試すために研究チームは、各メタデバイスを従来のTHzレンズの背後に置き、それに0.3THzで照射した。デバイス背後、1またはそれ以上のx-y面でディテクタを動かすと、THzビームがどこに焦点を結んでいるかを正確記録することができた。
将来の通信ツール
最初に、その照射を同心円の特定スポットに向けるために必要となる回転を計算し、チームは、2層と3層のデバイスの両方とも予想通りにビームの焦点を合わせることを確認した。前者の場合、スポットは単一面に、後者の場合、スポットは3つの異なる面、メタデバイスから4、5,6㎝の位置に集中した。チームは、エアリビーム焦点の深さもプローブし、25波長程度に拡張していることを示した。これは、回折のない挙動を意味する、すなわち焦点の安定性を実証するものであるとチームは話している。
研究チームによると、この結果はメタデバイスが、未来のセルラネットワークで、セキュアで柔軟性があり、高指向性、極めて集中的な通信ができることを示している。デバイスが、従来の望遠レンズとは違い、追加スペース不要でその焦点を調整できるとチームは指摘している。その技術は、ワイヤレスパワー転送、ズームイメージング、リモートセンシングに用途があるとチームは考えている。
研究チームは、そのメタデバイスを成熟した信号伝送システムに、まだ組み込んでいない。とは言え、高温レジン、3Dプリンティングによる製造を利用していることから、コスト効果が優れていることは、いずれわかるとチームは考えている。