March, 20, 2023, Stanford--スタンフォード大学の研究者は、よく知られた材料と製造工程を利用して、効果的、パッシブ、超薄レーザアイソレータを構築した。これは、フォトニクスに新たな研究の道を開くことになる。
レーザは変革的デバイスであるが、一つの技術的課題が、一層の変革を阻んでいる。レーザから出る光は、反射してレーザに戻り、レーザを不安定に、あるいは動作を停止する可能性がある。現実世界では、この問題は、有害な反射を阻止するために磁気を利用する大きなデバイスで解決される。しかし、いずれコンピュータ回路を変革すると考えられているチップスケールでは、効果的なアイソレータは、実現が難しいことが分かっている。
そうした背景に対してスタンフォード大学の研究者は、シンプルかつ効果的なチップスケールアイソレータ開発を報告している。これは、一枚の紙よりも数百倍薄い半導体ベース材料層に設置できる。
「チップスケールのアイソレーションは、フォトニクスで大きな開かれた課題の一つである」とスタンフォード大学電気光学教授、Jelena Vučkovićは言う。同氏は、Nature Photonics誌、論文のシニアオーサ。
「全てのレーザは、入ってきてレーザを不安定にする反射戻り光を止めるアイソレータを必要としている」と、Vučković ラボの博士課程候補、論文の共同筆頭著者の1人、Alexander Whiteは言う。さらに同氏は、そのデバイスは日常的なコンピューティングでは意味があるが、量子コンピューティングのような次世代技術にも影響を与えることが可能である。
小型でパッシブ
ナノスケールアイソレータは、いくつかの理由で有望である。まず、このアイソレータは、「パッシブ」である。外部入力、複雑なエレクトロニクス、磁気は不要。これらは、今日まで、チップスケールレーザにおける進歩を阻んできた技術課題である。これら付加的メカニズムは、集積フォトニクスアプリケーションには大きすぎ、チップ上の他のコンポーネントに妥協を強いる電気的干渉の原因になりうる。もう1つの利点は、その新しいアイソレータが一般的な、よく知られた半導体ベース材料でできていることである。つまり、既存の半導体加工技術を使って製造でき、潜在的に量産への道を容易にしている。
その新しいアイソレータは、リングのような形状である。それは、SiN製、最も一般的に利用されている半導体、シリコンベースの材料である。強力な一次ビームがそのリングに入り、フォトンがリングを時計回りにスピンし始める。同時に後方反射ビームが、反対方向からリングに戻り、反時計回りにスピンする。
「われわれが送り込んだレーザパワーは何度も円運動するので、これによりリング内部で強くなる。この増加するパワーは、弱い方のビームを変える、一方、強い方は、影響を受けない。反射された光、反射光だけが効果的に打ち消される」と、共同筆頭著者、Geun Ho Ahnは、弱い方のビームの共振を止める現象を説明している。
次に、一次ビームは、リングから出る。所望の方向で「アイソレート」されている。
研究チームは、概念実証としてプロトタイプを作製した。さらに2つのリングアイソレータをカスケードにしてさらにパフォーマノンスを改善することができた。
「次のステップには、様々な光周波数のためのアイソレータに取り組むこと、同様に、チップスケールでコンポーネントをしっかり組込み、そのアイソレータの他の利用法を探求し、性能改善が含まれる」論文の共著者、Kasper Van Gasseは話している。
(詳細は、https://news.stanford.edu)