March, 7, 2023, 東京--東京大学大学院理学系研究科の井手口拓郎准教授のグループは、上方変換タイムストレッチ赤外分光法を開発し、従来手法よりも30倍以上多くのスペクトル点数を得ることに成功した。この手法では、赤外超短パルス光を近赤外領域に波長変換する仕組みを導入することで、高効率な測定が可能となった。
赤外分光法は、分子の振動を非破壊的に測定する分析手法であり、測定された振動分光スペクトルを通じて物質の性質を明らかにすることができる。一般的には時間変動しない物質の測定に用いられるが、高速に変化する現象や多数回の測定を要する場面では、多くの分子振動情報を迅速に得る必要がある。
近年、タイムストレッチ赤外分光法(TSIR)の開発により、毎秒8000万回の超高速の赤外分光測定が可能になったが、赤外領域での光学技術が発展途上であるため、一度に得られる分光スペクトル点数が限られていた。
この手法は今後、これまで測定のできなかった高速現象の解明や、多数の試料の短時間非破壊解析に貢献することが期待される。
研究の要点
・1000点のスペクトル点数をもつ赤外分光スペクトルを毎秒1000万回測定可能な超高速赤外分光法を開発した。
・波長変換技術を活用し、従来の高速赤外分光法に比べてスペクトル点数を30倍以上向上した。
・高速現象の追跡や多数の分子振動スペクトルの短時間解析など、幅広い分野での応用が期待される。
(詳細は、https://www.s.u-tokyo.ac.jp/)