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キール大学、新しい有機半導体材料を開発

October, 9, 2014, Amherst--キール大学Christian-Albrechtsの研究チームは、有機スズを半導体ポリマに組み込むことに初めて成功した。半導体ポリマは、例えば太陽電池で太陽光吸収に使える。プラスチックに有機スズを組み込むことで光は幅広い範囲の太陽スペクトラムで吸収でされるようになる。
 金属のような導電体と対照的に半導体はある条件下でのみ電気を伝導する、例えば光照射で。この特性のために半導体プラスチック(半導体ポリマ)は、最新世代の太陽電池、有機太陽電池にとって極めて有望な材料となる。標準的な異種材料に比べると、半導体ポリマの製造は安価であり、非常に軽量な材料で、多くのアプリケーション、例えば輸送分野などで優位性がある。「有機太陽電池はまだシリコンベースの無機太陽電池と同等の効率に達していないので、この分野の研究要求は大きい」とOtto Diels-InstituteのAnne Staubitz氏はコメントしている。
 そのような半導体の重要な基準は、太陽光をどのように効率的に吸収して電気に変換するかということ。太陽光が電気に変換されるとき、半導体の負電荷の電子が1つのエネルギー準位から上のエネルギー準位に上がる。このプロセスは、低エネルギー準位に正電気を帯びた「ホール」を残す。それらの電荷が別々に異なる電極に動く。つまり電流が観察される。太陽光はこのプロセスをスタートさせるのである。これらのエネルギーレベルが互いに近ければ近いほど、このプロセスはますます容易になる。より多くのフォトンが吸収され、より多くの太陽エネルギーが用いられる。ポリマは、エネルギーレベルのバンドギャップが小さく、赤、稀には紫色をしている。
 合成有機半導体研究の1つの目的は、小さなエネルギーギャップ(バンドギャップ)の有機ポリマを作り出すこと。しかし、そのように強い光吸収の開発、濃い色のプラスチックは非常に難しく、したがって現在の研究では極めて活発な分野である。「われわれの研究所の新しい材料では、そのようなプラスチックの開発にわれわれが成功したことが目で見てわかる」とStaubitz氏は言う。ポリマは深紫色溶液で、薄膜にするとほぼ黒色になる。
 非常に小さなバンドギャップを実現するために研究チームは新しい考えを用いた。環状分子形状の有機スズ(スタノール)をカーボン-ポリマバックボーンに組み込んだ。スズは炭素と同じ化学グループに属し、したがってその特性の一部は同じである。しかし、スタノールと類似の炭素同族元素(シクロペンタジエン)の電気特性は非常に違っている。Staubitz氏によると、スズは単なる過重炭素原子ではない。「スズは、有機化合物のエネルギーレベルを大幅に下げることができる」。しかし今日まで、ポリマ材料でスズのこの特性を利用した者は誰もいなかった。
 これらの個々の分子構成要素(モノマ)をいっしょにするのは研究者にとって非常に困難な作業だった。モノマは、スタノールユニットそのものに所望のスズを含んでいるだけでなく、有機スズはモノマをいっしょにしてポリマを形成するのに必要な反応性カプリンググループにも存在した。これらのグループだけが反応し、スタノール環は攻撃されてはならなかった。これは必須である。なぜなら、望ましくない副反応はポリマ鎖を大幅に短くするからだ。「これは非常にリスクの高いプロジェクトであった、なぜなら2つの異なる有機スズグループから選べるカプリング反応は、これまでに化学では知られていなかったからだ」。Ph.D学生、Julian LinshÖft氏は、非常に選択性の強いクロスカプリング反応を開発しなければならなかっただけではない。「最初の困難は、モノマのための正しい反応パタンを見つけ出すことだった。このために、これまでの化学文献にはなにもなかった」と同氏はコメントしている。
 実験は成功した。研究チームは、パラジウムを反応触媒として使用し、所望のプラスチックを準備することができた。材料は簡単に薄膜に加工できる。それは黒くきらめき、現在太陽電池でそのアプリケーションがテストできるようになっている。