January, 24, 2023, New Yorlk--コロンビア大学エンジニアは、選択した色の光のみに集束するフラットレンズを開発した。それは、正しい波長の光ビームを照射するまでは全く透明に見えるが、光を照射するとグラスがレンズに変わる。
拡張現実(AR)を試してみた人ならだれでも、その技術がまだわれわれの日常生活の一部になる準備ができていないことがわかる。研究チームは、高性能ARグラスを完璧にするために取り組んできたが、課題は多い。従来のARグラスの主要な問題は、実際に見ている外部シーンと可視化したいコンテクス情報との間の品質および輝度に関するトレードオフである。多くのマルチコンポーネントで使われるGoogleGlassのような初期のソリューションは、部分的に反射的、部分的に透過的であり、実世界とコンテクスシーンの混合となり、結果は両方のシーンのぼやけて歪んだビジョンとなる。
もっと最近のAR HMDアイグラスは、波長サイズ間隔の回折格子でパタンがつけられており、グラス脇のミニプロジェクタからのコンテキスト情報を見る人の目に曲げる。しかし、これらのアイグラスは、まだ霞んでおり、外部シーンを歪める、グラスを透過する実世界の光は、グレーティングによって不可避的に散乱、分散されるからである。複数のオーバーラップするグレーティングを使って、ミニプロジェクタからの多数の違う色を取り扱わなければならないときには、この歪みは悪化する。人の目に、外部環境やコンテキスト情報を完全にブレンドするARグラスがあるなら、多くのアプリケーションに極めて有用になる。HUDとして、その技術は、自動車を運転する人にナビゲーション指示を与え、センサからのデータを飛行機を操縦するパイロットに提供する。パイロットはフロントガラスから目を背ける必要はない。HUDとして、その技術は、医者や兵士が、手元のタスクに関連する情報をこれまでになく容易に効率的に見ることができるようにする。
グラスは、減衰なく、歪みのない外部世界の視覚のために、ほぼ全可視スペクトルで完璧に透明でなければならないとともに、極めて効率的なレンズとして機能する必要がある。すなわち、ミニプロジェクタからの光を人の目に集光させ、外部の実世界シーンをともなう視覚的コンテキストを形成するのである。
新しい種類の波長選択的波面成形グラス
コロンビアエンジニアリングの研究者は、まさにこの種のグラスの開発を報告している。応用物理学、応用数学准教授Nanfang Yuをリーダーとするチームは、選択されたわずかなナローバンド光の色だけにフォーカスするフラット光学デバイスを開発した。選択されていない光は、広いスペクトルで透明なままである。論文は、Science & Applicationsに発表された。
「われわれは、完全に透明に見えるとてもクールなフラット光学デバイスを造った、正しい波長の光ビームをそれに照射して初めて、そのデバイスは突然レンズに変わる」と、ナノフォトニクス研究リーダー、Yuは話している。
Yuのグループは、超薄型光コンポーネント、メタサーフェスベースのフラット光学デバイスを開発している。狙いは、フリースペースおよび光導波路で光伝播を制御すること。メタサーフェスは、「光アンテナ」と言われるデザイナー散乱体の2Dアレイでできている。これは、ナノメートルスケールの寸法の微小バージョン無線アンテナ。メタサーフェスの重要な特徴は、光散乱体がすべて、光学的に異なっていること。それが散乱させる光は、さまざまな振幅、位相あるいは偏光が可能である。メタサーフェスが、光学的に多様な光応答を示し、極めて柔軟に光を制御できるようにである。結果、メタサーフェスは、従来3D光コンポーネント、遙かに大きなフットプリントのデバイスを必要とする機能を実現できる。光ビームの集束、光ビームの操作、光信号のスイッチングなどが集積フォトニックチップでできる。
非局所的メタサーフェス
Yuのチームは、「非局所的メタサーフェス」を発明した。これは、明確な標的波長で明確な方法で光波長を操作でき、対象外の波長の光は影響なしにしておく。その新しいデバイスは、色を選択してそれを単一波長だけでなく、複数の異なる波長で独立に集束することで、空間とスペクトル制御を行う。たとえば、デバイス機能を、光を一色に集束する集束レンズとして、また第2の色で光を分光する凹レンズとして、実証した。同時に、残りのスペクトルの光に光照射したときに、模様のない板ガラスのように透明のままである。
所望の色だけの光を集束する初のレンズ
「対称性を破壊する摂動に基づいたアプローチを使い、波長選択、波面成形光学デバイスを実験的に実証したのは、これが初めてである」とYuのグループの博士課程学生、Stephanie Malekは説明している。「慎重に最初のPhC形状を選択することで、われわれは波長選択を達成できる。また、PhCに適用される摂動の方向を調整することでわれわれは、選択された光の色の波面を形作ることができる。つまり、われわれは選択した色だけの光を集束するレンズを作れる」。
これまでで最も高機能でマルチカラーのメタサーフェス
チームは、4つの明確な波長で独立的に光学波面を成形するが、他の非選択波長では透明基板となる多機能デバイスを実証した。これは、それがこれまでに実証されたもので、最も多機能で、マルチカラーメタサーフェスになることを示している。また、将来的に、フルカラーARディスプレイが、仮想情報の数個の色を独立に制御することで実現できることを示している。
(詳細、https://www.engineering.columbia.edu/)