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マクロな物体を引っ張る光トラクタビームを実現

January, 24, 2023, Washington--青島科技大学の研究者は、レーザ光を使ってマクロなオブジェクトを引きつける方法を開発した。巨視的光トラクタビームは、以前に実証されていたが、レーザプリング(引張)が、より大きな物体で利用されたのはこれが最初の一つである。

光は、浮上や回転など様々なタイプの光操作に使えるエネルギーと運動量を含む。例えば、光ピンセットは、科学的機器で一般に利用されている。レーザ光を使って、原子、細胞など微小な物体を保持し、操作する。過去10年、科学者は、レーザ光を使って、物体を引っ張る光トラクタビームを作る、新しいタイプの光操作に取り組んできた。

「以前の研究では、光引張力は、マクロな物体を引っ張るには小さすぎた」と青島科技大学の研究チームメンバー、Lei Wang は、言う。「われわれの新しいアプローチでは、光引張力は、遙かに大きな振幅を持つ。実際、それはソーラセイル駆動に使われる光圧よりも三桁大きい。光圧は、小さな押力行使にフォトンの運動量を使う」。

Optics Express誌でWangとチームは、チームが設計したマクロスコピックグラフェン-SiO2複合オブジェクトを希ガス環境でレーザプリングに使用することができた。このタイプの環境は、大気圧よりも遙かに低圧である。

「われわれの技術は非接触、長尺引張アプローチであり、様々な科学実験に役立つ可能性がある。その技術を実証するためにわれわれが使った希ガス環境は、火星にあるものと同じである。したがって、火星で車輌あるいは航空機を操作する可能性がある」(Wang)。

十分な力を作る
新しい研究では、チームは、レーザ張力に特化して特別なグラフェン-SiO2複合構造を設計した。レーザ照射すると、その構造は逆温度差を生み出し、レーザとは反対側が熱くなる。

グラフェン-SiO2複合構造でできたオブジェクトが、レーザビームで照射されると、その裏面で気体分子が受けるエネルギーが多くなり、オブジェクトを光源の方へ押しだす。これと希ガス環境の低空気圧とを組み合わせることにより、研究者は、マクロオブジェクトを動かせるだけの強いレーザ張力を得ることができた。

グラフェン-SiO2複合構造でできた捻り、つまり回転、振り子デバイスを使い、チームは、裸眼で見えるレーザ張力現象を実証した。次にチームは、従来の重力振り子を使い、レーザ張力を定量的に計測した。両方のデバイスとも約5㎝長だった。

反復可能、チューナブル張力
Wangは、「その張力は、光圧よりも三桁大きいことを確認した。さらに、レーザ張力は反復可能であり、力はレーザパワーを変えることでチューニングできる」と説明している。

研究チームによると、この研究は概念実証に過ぎない。その技術の多くの側面は、実用化前に改善する必要がある。例えば、指定のパラメタでレーザ張力を正確に予測するには体系的理論モデルが必要である。オブジェクトの幾何学的配置、レーザエネルギーや周囲の媒体などである。チームは、幅広い範囲の空気圧に使えるようにレーザ張力戦略の改善を考えている。

「われわれの研究は、マクロなオブジェクトの柔軟な光操作は光、物体、媒体間の相互作用が慎重に制御されるときに、実行可能であることを示している。それは、レーザと物質との相互作用の複雑さも示しており、多くの現象は、マクロとミクロスケールの両方で、理解が容易でないことを示している」とWangは話している。