Science/Research 詳細

光を99.98%以上吸収する至高の暗黒シート

January, 19, 2023, つくば--産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門 応用光計測研究グループ 雨宮邦招 研究グループ長、清水雄平 主任研究員、光放射標準研究グループ 蔀 洋司 研究グループ長と、量子科学技術研究開発機構(量研)量子ビーム科学部門 越川博 主幹技術員、八巻徹也 研究企画部長は、漆類似成分のカシューオイル黒色樹脂の表面に微細な凹凸を形成して光を閉じ込めることで、可視光の99.98%以上を吸収する「至高の暗黒シート」を開発した。

この技術は、イオンビーム照射と化学エッチングで微細な円錐状の凹凸(光閉じ込め構造)の原盤を形成し転写する方法を幅広い素材に拡張したもので、今回、光吸収率が格段に向上した新しい暗黒シートの開発に成功した。中でも、カシューオイル黒色樹脂は素材内部からの散乱反射(くすみ)が特に少ないという特徴を持ち、光閉じ込め構造によって素材表面の鏡面反射(ぎらつき)も抑えることで、レーザポインタが消えて見えるほどの深い黒を実現する。
 従来の暗黒シートと比較して可視光の半球反射率が一桁以上低い0.02%以下となり、触(さわ)れる耐久性を有する素材としては世界一の黒さを達成した。この至高の暗黒シートは、明るい場所でも沈む圧倒的な黒さを実現でき、背景の映り込みを防止できるため、視覚表現にこれまでになく高いコントラストを提供する。

この技術の詳細は、2023年1月13日(米国東部標準時間)にScience Advancesに掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)