January, 17, 2023, Munich--MRIを使って腫瘍細胞の代謝作用のトレース図は、これまでのところ、通常の臨床設定では実現可能ではなかった。現在、ミュンヒェン工科大学(TUM)を含む学際的研究チームが、量子ベースのハイパーポラライザの開発促進に取り組んでいる。
目標は、それを臨床アプリケーションに導入すること。その目標は、代謝プロセスのMRIイメージングの大幅な改善である。例えば、腫瘍の早期、より正確な評価が可能になり、腫瘍治療の選択とモニタリングの改善となる。
量子力学は、最小スケールの物理的現象を説明する。分子、原子、原子核、さらに小さな単位の領域の現象。量子コンピューティング、量子センサなどの量子技術を使って、われわれの日常生活の様々な領域を変革する原動力が表面化してきた。これら新技術が医療分野にどのように導入できるか。
代謝イメージングが代謝過程を可視化する
初期段階でガン細胞を検出、より正確にそれを評価し、素早い治療効果を評価することは、病気および健康な細胞の両方において代謝プロセスの可視化で容易になる。これは、代謝イメージングとして知られている。この目的のために、診断に関係する分子を体内に注入し、その代謝をモニタする。
一つのアプローチは、PETの利用である。しかしこの方法は放射性物質を必要とし、代謝プロセスにおける初期および最終生成物間の区別ができない。MRIは、それに対して、放射性物質を使うことなく、様々な代謝生成物のイメージンができる。注入分子のMRI信号が十分に増幅されて、それが検出できるようにすれでばの話であるが。最初の患者研究は、MRIによる代謝イメージングの大きな潜在性を示しているが、これまでに導入されている信号増幅技術は、途方もなく高価であり、十分にロバストとは言えず、スローである。今までのところ、これが臨床設定で、これらの技術の定期的な導入を阻んでいる。
「量子技術によるガンイメージングの変革」”Revolutionizing Cancer Imaging with Quantum Technologies”プロジェクト(QuE-MRI)は、現在、新しいソリューションを開発中である。いわゆる量子ハイパーポラライザは、量子物理学法則を作って、MRIにおける代謝分子の信号を100000倍に増幅する。
量子力学の法則によるイメージング
普通のMRI装置の技術は、いわゆるスピン、つまり各モーメントに関連する原子核の機械的特性を利用している。各スピンが、磁気モーメントを生成するが、磁針の双極子磁石と大して変わらない。
核スピンの配列が、原子核の全般的な磁気モメントの強さを決める。すると、これが信号の強さを決め、これは磁気共鳴イメージングに使用される。磁気モーメントの方向分布がランダムあると、それらは相互にキャンセルし合い、MRI装置は、まったく信号を検出しない。最強の信号は、各スピンの磁気モーメントが同じ方向を指している時に達成され、最大効果磁化となる。
MRIは、非常に強力な磁界を使って、これを可能にする。しかし、核スピンの磁気モーメントは、ほぼランダムに分布しており、磁化効果は低い。過分極化は、核スピンの磁化効果を10000~100000倍高めるので、MRIの感度は著しく向上する。
診断的に関連する代謝分子の過分極化
しかし、実際、代謝分子の原子核をハイパーボラライズ状態に誘い込むことは難しい。したがって研究者は、パラ水素と言われる水素の特殊な磁気状態をベースにした中間ステップを利用する。これは、既知の方法を使って液体窒素やガスシリンダに蓄積されたものを使って低温で生成できる。
パラ水素の特性は、量子力学の法則に立脚している。パラ水素自体は、磁気的に遮蔽されており、磁気共鳴法を使って計測することはできないが、そのスピン構成は、他の原子核を分極化できるので、MRIにおける可視化が向上する。
このアプローチを使用して、研究チームは、代謝プロセス研究に重要な分子を分極化する。例えば、ピルビン酸塩、腫瘍によって乳酸に加工処理される代謝生成物は、診断目的に、特に適している。研究者は、パラ水素をハイパーポラライザのピルビン酸塩にドッキングし、そのスピン構成を利用し、電波を使って磁界のピルビン酸塩の炭素原子を分極化する。ピルビン酸からの信号は、それによって、MRIで強められ、対応する代謝プロセスが、時間分解能で可視化される。
プロジェクトパートナーは、すでにハイパーポラライザの機能プロトタイプを開発した。QuE-MRIプロジェクトでは、研究者、医者、産業パートナー、医療分野の開発者、物理学者、化学者とエンジニアが、密接に協力して、ハイパーポラライザが、大規模に臨床導入できるように、これらのプロトタイプを最適化している。加えて、プロジェクトチームは、ガン診断のために、初期臨床試験で、非侵襲的、非放射性技術の評価を行う計画である。
(詳細は、https://www.tum.de)