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UC Santa Barbara、次世代半導体材料

December, 23, 2022, Santa Barbara--走査型超高速電子顕微鏡により研究者は、立方ヒ化ホウ素の有望なホットフォトキャリア輸送特性を明らかにした。

次世代半導体材料としてのその有望性を確認した研究で、UC Santa Barbaraの研究者は、立方ヒ化ホウ素単結晶のフォトキャリア輸送特性を直接可視化した。

「電荷がわれわれのサンプルにどのように入ってくるかを可視化することができた」とBolin Liaoは言う。同氏は、工学部機械工学准教授。US大学で唯一の走査型超高速電子顕微鏡(SUEM)セットアップを使い、チームは、この比較的ほとんど研究されていないIII-V半導体材料における光励起電荷の生成と輸送プロセスの「動き」を作ることができた。これは最近、並外れた電気的、熱的特性を持っているとして認識されるようになった。そのプロセスでチームは、別の有益な特性も見つけた。次の素晴らしい半導体としての材料の可能性に加わるものである。

研究は、ヒューストン大学のZhifeng Ren物理学教授と協力して行われた。同教授は、高品質単結晶立方ヒ化ホウ素製造が専門であり、Matter誌に発表されている。

「感覚的に把握する」
ヒ化ホウ素は、その有望なパフォーマンスにより、コンピュータ界の主要な半導体材料、シリコンに替わる潜在的な候補として注目されている。一つには、シリコンに対して電荷移動度が改善されており、簡単に電流(電子とホール)を伝導する。しかし、シリコンと異なり、それは、簡単に熱も伝導する。

「この材料は実際、シリコンよりも10倍高い熱伝導性を有する」(Liao)。この熱伝導性、つまり放熱力は、特に重要である。電子コンポーネントが小さくなり、さらに高密度に詰め込まれているからであり、すると蓄積された熱がデバイスのパフォーマンスを脅かす、と同氏は説明している。

この材料の高い熱伝導性を生み出すものが、フォトキャリアの興味深い輸送特性にもつながりうることが分かっている。例えば、ソーラセルでは光によって励起される電荷。実験的に検証されると、立方ヒ化ホウ素もPVや光検出アプリケーション向けの有望材料となりうることをこれは示唆している。しかし、立方ヒ化ホウ素におけるフォトキャリア輸送の直接計測は、利用できる高品質サンプルのサイズが小さいために、挑戦的であった。

研究チームの研究は、2つの成果を統合している。ヒューストン大学チームの結晶成長技術と、UC Santa Barbaraのイメージング能力である。走査型電子顕微鏡とフェムト秒超高速レーザを統合することでUCSBチームは、本質的に超高速、飛躍的に高分解能のカメラを構築した。

「電子顕微鏡は、非常に優れた空間分解能であり、サブナノメートルの空間分解能で単一原子を解像できる、しかし一般的に、非常に遅い」とLiaoは言う、つまり静的画像の取得には優れていると言うことである。

「われわれの技術では、非常に高い空間分解能と超高速レーザを組み合わせる、シャッタ速度が非常に速いので、非常に高い時間分解能である。われわれは、1 psの話をしている。したがって、これらの微小エネルギーと電荷輸送プロセスのムービーを作ることができる」(Liao)。最初にCaltechで開発された、その方法は、UCSBで、最初からさらに開発が進められ、今ではアメリカの大学で唯一の運用SUEMセットアップである。

「起こることは、サンプルを励起するこのレーザの1パルスである」論文の筆頭著者、Usama Choudhryは言う。「ベルを鳴らすようなものである。それは、うるさい雑音であり、時間と共にゆっくりと消えていく。ベルを鳴らすように、第2のレーザパルスがフォトカソードに集束し、短い電子パルスを生成して、サンプルをイメージングする。次に、徐々に電子パルスをスキャンして、ベル全体のフル画像を取得する。これらのスキャンを多くしているようであるが、電子とホールがどのように励起され、最終的に正常に戻るかのムービーを撮ることができる」と同氏は説明している。

中でも、サンプルを励起し、電子が元の状態に戻るのを観察している間、「ホット」電子がどの程度長く存続するかを観察した。

「驚いたことに、この材料で光励起されたホット電子は、従来の半導体よりも遙かに長時間存続することを確認した。「ホット」キャリアは、200ps以上存続することが分かった。その材料の高い熱伝導性に関係するのと同じ特性に関わる特性である。非常に長時間「ホット」電子をホストする能力は、重要な意味を持つ。

「例えば、一般的なソーラセルを光で電子を励起するとき、全ての電子が同じエネルギー量ではない。高エネルギー電子は寿命が非常に短い。低エネルギー電子は、寿命がとても長い」(Choudhry)。一般的なソーラセルからエネルギーを収集するとなると、低エネルギー電子だけが効率的に収集される。高エネルギー電子は、そのエネルギーを熱として急速に失いがちである。

ヒ化ホウ素は3つの関連領域でシリコンを打ち負かす。電荷移動度、熱伝導性とホットフォトキャリア輸送時間。それは、エレクトロニクス界の次の最先端材料になる可能性がある。しかし、まだ大きな障害に直面している。高品質結晶の大量製造である、それができた後にヒ化ホウ素は、シリコと競合できる。つまり、膨大な量が比較的安価に、高品質で製造できるようになる。とは言え、Liaoは問題を過大に考えていない。

「長年にわたる投資により、シリコンは現在、日常的に利用できる。シリコンの開発が始まったのは1930sおよび40年代である。この材料の潜在力を人々が認識すると、それを成長させて利用する方法を見いだす取組が増える。UCSBは、この課題では実に独特の位置にある。半導体開発の強力な専門技術を有している」と同氏はコメントしている。
(詳細は、https://www.news.ucsb.edu)