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超薄ソーラセル、衛星のパフォーマンス改善

December, 22, 2022, Washington--ほとんどの宇宙衛星は、太陽光を電気に変換する太陽電池を搭載している。軌道に存在するある種の放射線にさらされることは、デバイスに損傷を与え、その性能を劣化させ、寿命を制約する。

AIP PublishingによるApplied Physics誌で、ケンブリッジ大学の研究者は、放射線耐性のあるPVセル設計を提案した。これは、光吸収材料の超薄層が特徴である。

ソーラセルが光を吸収する時、そのエネルギーは材料の負電荷電子に移転される。これらの電荷キャリアは、自由にノックされてPVで電流を生成する。宇宙の放射能は、損傷の原因であり、ソーラセル材料の原子を置換し、電荷キャリアの寿命を縮める。PVをより薄くすることで、その寿命は延びる。電荷キャリアが、短い寿命の間に移動距離が少なくなるからである。

地球の低軌道には、散乱している衛星の数が多いので、地球中軌道、地球のプロトン放射ベルト中心を通過するMolniya軌道などの利用がますます必要になっている。放射線耐性セル設計が、これらの高い軌道では必要になる。

放射線耐性セルのもう1つのアプリケーションは、他の衛星や月の研究である。例えば、木星の月、Europaは、太陽系で最も厳しい放射線環境の一つである。Europaに太陽駆動宇宙船を着陸させるには、放射線耐性デバイスが必要になる。

研究チームは、半導体GaAsを使用する2種類のPVデバイスを構築した。一つは、複数の物質を層状にスタックすることで構築したオンチップ設計。もう1つの設計は、光吸収増強のために銀の裏面ミラーが必要だった。

宇宙の放射線の影響を真似るために、デバイスに、UKのDalton Cumbrian Nuclear Facilityで生成したプロトンを衝突させた。放射線の前と後のPVデバイスの性能は、放射線損傷量を計測できる陰極線発光として知られる技術を使って調べた。Compact Solar Simulatorを使う第2の一連のテストは、プロトン衝突後にデバイスが太陽光をどの程度よく電力に変換するかを判断するために行われた。

「われわれの超薄ソーラセルは、以前に研究した、一定閾値を超えるプロトン放射線のためのより厚いデバイスの性能を上回った。超薄形状は、以前の観察との関連で二桁優れた性能を示している」とArmin Barthelは、コメントしている。

研究チームによると、これら超薄セルのパフォーマンスは改善されている、電荷キャリアがデバイスの端子間を移動する寿命が長いからである。

より厚いセルと比較すると、20年動作後の同じパワー量生成には、超薄セルに必要なカバーガラス約.5倍少ない。これは、軽量負荷であり、打ち上げコストの大幅削減となる。
(詳細は、https://publishing.aip.org/)