Science/Research 詳細

“光濃縮”で がん細胞を狙い撃ち、細胞内導入に必要な薬剤量を100分の1

December, 20, 2022, 大阪--大阪公立大学 研究推進機構 協創研究センター LAC-SYS研究所の中瀬生彦 所長補佐、飯田琢也 所長、床波志保 副所長らの研究チームは、がんの治療に有用な生物機能性分子を細胞内に導入する際の光誘導加速に関する新技術の基礎構築に成功した。

研究ではわずか100秒のレーザ照射による光発熱効果で発生した対流(光誘起対流)を駆使し、細胞表面に輸送・濃縮した生物機能性分子の選択的な生化学反応を光誘導加速して、有用な分子を従来よりも100〜1000分の1の低濃度で細胞内に濃縮導入できることを実証し、その機構解明につながる重要な知見を獲得した。特に、数百pmol/L(p(ピコ):10-12)レベルの低濃度条件下でもミトコンドリア検出試薬などの低分子を細胞内の小器官に選択的に導入することに成功した。

さらには数十nmol/L(n(ナノ):10^-9)レベルの低濃度の抗がん活性ペプチド(R8-PAD)をがん細胞内に濃縮導入し、狙った細胞群のアポトーシス(細胞死の一種)を誘発することにも成功した。

この研究成果により、低濃度の薬剤を狙った病原細胞に選択的に導入することによる副作用低減のための知見獲得や、高価な新薬の細胞試験における薬剤量を大幅削減して開発コストの低減が可能となり、創薬プロセスの期間短縮や開発費削減にもつながると期待される

研究成果は、2022年12月16日、「Nano Letters」にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.omu.ac.jp)