December, 9, 2022, Wien--ETH物理学者は、多様な「デュアルコム」レーザを開発した。これは、広いスキャニング範囲とハイパワー、低雑音、安定動作、使いやすさを統合しており、したがって実用への展望は明るい。
パルスレーザ光源の様々なアプリケーションは、遅延を段階的に増加させながら一連のパルスペアを生成する機能に依存している。高精度のそのような光遅延スキャニングの実装は要求が厳しい、特に長い遅延である。ETHの開発は、この課題に対処するものである。
超高速レーザ技術は、精密計測にとって方法の宝庫である。これらに含まれるのは特に幅広い種類のパルスレーザ実験である。ここではサンプルが励起され、可変時間後、応答が計測される。そのような研究では、2つのパルス間の遅延が、一般にフェムト秒からナノ秒の範囲をカバーする。実際、反復的で精密な仕方でその広い範囲の遅延時間をスキャニングすることは、大きな課題である。量子エレクトロニクス研究所Ursula Keller教授のグループの研究チームは、Dr. Justinas Pupeikis, Dr. Benjamin WillenbergおよびDr. Christopher Phillipsからの提案により、広範な実用的アプリケーションには大変革となりうるソリューションに向けて大きな一歩を踏み出した。Opticaの記事によると、チームは先頃、多目的レーザ設計を紹介し、実証した。これは際立つ仕様と複雑さのセットアップで、何時間も安定動作する。
ロングパスからロングディレイ
スキャニングオプティカル遅延の概念的に最も簡素なソリューションは、出力が2つのパルスに別れるレーザに基づいている。一方がターゲットまで固定ルートをとり、第2パルスの光パスは、直線的に移動するミラーによって変化する。ミラー間のパスが長ければ長いほど、ターゲットに到達するレーザパルスは遅くなり、最初のパルスと比較して遅延は長くなる。しかし、問題は、周知の通り、光は高速であり、0.3m/ns(空気中)程度進むことだ。機械的遅延線ではこれは、数nsまでの遅延スキャニングは、複雑で、一般に遅い機械的構造の大きなデバイスを必要とすると言うことである。
その種の複雑な構造を回避するエレガントな方法は、超短パルスレーザペアの利用である。それは、各々がわずかに異なる繰り返しレートのパルストレインを出力する。例えば、最初のパルスが、レーザの各々から完全に同期して出てくると、今度は第2のペアは、2つのレーザの繰り返し時間の差に対応するパルス間遅延となる。次のパルスペアは、2倍の遅延となる、この方法で、完全なる直線的、高速光遅延スキャンはパーツを動かすことなく可能になる、少なくとも理論的には。2つのそのようなパルストレインを生成するレーザシステムの最も洗練されたタイプは、デュアルコムとして知られいる。一対の光周波数コムで構成される
デュアルコムアプローチの有望性は以前から明らかであるが、アプリケーションへの進展は、直ぐに導入可能なレーザシステムの設計に関連する課題で阻まれていた。すなわち、2つの同時に動作するコムの要求される品質と高い相対安定度を提供するレーザシステムである。今回、Pupeikis et al.は、そのような実用的レーザに向けてブレイクスルーを達成した、またカギは、全く同一のレーザキャビティ内の2つの周波数コムを生成する新しい方法である。
1つから2
研究チームの手元にあるタスクは、2つのコヒレント光パルストレインを供給するレーザ光源の構築だった。これらは、繰り返しレートの決定的な違いを除けば、全ての特性が基本的に同じである。これを達成する自然なルートは、同じレーザキャビティ内に2つのコムを作ること。そのようなレーザキャビティ多重を実現する様々なアプローチが、過去に行われた。しかし、これらは一般に、キャビティ内に追加のコンポーネントを設置する必要がある。これは、中でも、2つのコムに損失と異なる分散特性を導入することになる。ETH物理学者は、2つのコムがキャビティ内のコンポーネントの全てを共有することを確実にしながら、これらの問題を克服した。
チームは、キャビティに「バイプリズム(biprism)」を挿入することでこれを達成したのである。これは、光が反射される表面に2つの別の角度をもつデバイス。バイプリズムは、キャビティモードを2つに分け、研究者は光学キャビティの適切な設計により、その2つのコムを活性キャビティ内成分で空間的に分離できる、そうでなければまだ非常に似たパスをとることになる。「アクティブコンポーネント」(活性成分)は、ここではレーザ発振が誘導される利得媒体のこと。また、いわゆるSESAM(半導体過飽和吸収体ミラー)素子のことである。これによりモードロックとパルス生成が可能になる。これらの段階でモードの空間分離とは、明確な間隔の2つのコムの生成が可能であり、一方でほとんどの他の特性は、本質的に重複となっている。特に、2つのコムが相関性が高いタイミングノイズの場合である。即ち、時間的コム構造における不完全性は、不可避的に存在するが、それらは2つのコムでほぼ同じであるので、そのようなノイズへの対処は可能である。
実用的アプリケーションへのゲート
今回紹介した新しい短キャビティアーキテクチャの際立つ機能は、それがレーザ設計で妥協を必要としないことである。代わりに、シングルコムオペレーションに最適なキャビティアーキテクチャが、ただちにデュアルコム利用に適用できる。それにより、新しい設計は、商用製品との関連で大きな簡素化となり、この新しい種類の超高速レーザ光源の製造と導入に道を開く。
最初のデモンストレーションで達成したベンチマークは、極めて心強い。研究チームは、2-fs精度(物理的距離で1µm以下)で12.5ns(空気中距離3.75mに相当)の光遅延を500Hz、シングルキャビティ・デュアルコムレーザでは記録的な高い安定性でスキャンした。得られたパフォーマンス、各コムで2.4W以上のハイパワー、140 fs以下の短パルス幅、実証された光を異なる波長範囲に変換するための光パラメトリックオシレータ(OPO)結合を含むパフォーマンスは、幅広いスペクトル計測への実用的な潜在アプローチを明確に示している。精密光レンジング(絶対的距離の光計測)から超高速現象のサンプリング向けの゜高分解能吸収分光法と非線形分光法までである。
(詳細は、https://www.phys.ethz.ch)