November, 29, 2022, 仙台--東北大学大学院生命科学研究科の生駒葉子助教、松井広教授(大学院医学系研究科兼任)らのグループは、蛍光センサタンパク質をグリア細胞に発現させたマウスに対して、光信号解析の新手法を使うことで、脳内で生じる素過程を分離し、脳内グリア細胞内のカルシウム、pH、脳血流量の変化を調べることに成功した。
この新開発の手法を使って、テンカン発作の発展にともなう、視床下部注5の局所脳内環境の変化を追跡した。その結果、視床下部グリア細胞は、テンカン発作の初期はアルカリ化し、テンカン発展時には酸性化することが示された。テンカン突然死における脳内環境変化も捉え、発作時の生と死を分ける境界反応を見つけることにも成功した。
研究では、グリア細胞の活動がテンカンの発展と関わることが示され、今後、グリアをターゲットにした新治療の開発が期待される。
ファイバフォトメトリ法は、動物の生体脳の活動を観察するために開発されてきた技術。しかし、光ファイバを伝わる蛍光には、複数の信号が混じり合っているため、これまでは、正しい情報を引き出せなかった。
発表の要点
脳内の局所環境情報を光ファイバで読み出す新技術を開発。
・マウスを用いて、脳内代謝を司る視床下部の環境をファイバフォトメトリー法で光計測し、テンカンの発展にともなう脳内グリア細胞内のカルシウム、pH、脳血流量のダイナミクスを追跡した。
・グリア細胞の酸性化応答が明らかになり、グリア細胞から神経細胞への作用がてテンカンの増悪化に関与する可能性が示唆された。
・グリア細胞活動を制御することで、テンカンに対する新治療法が開拓されることが期待される。
研究成果は、2022年11月25日付でBrain誌にオンライン掲載された。
(詳細は、Optically Analyzing Local Brain Environment: Astrocytes’ Acid Response in Epileptic Mice)
(Ikoma et al., Brain 2022 特設ページ)